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ー過去ー59

「和也! お前はどうしてこうもうるさいのかなぁ? まだ、こっちは仕事してんだよ!」 「確かにいつもうるさい俺だけどー、これが騒げずにいられますかーつーの! な、なんと!! 今日、実琴と新城が食事するらしいぜ! これってもしかしたら進展があるかもって事だろ? だから、あの二人に進展がありそうなのに騒がずにはいられないってー!」 「あー、なら、良かったな……。 それで気が済んだんなら、そこで大人しく待ってろよ」  和也はその望の言葉に、詰まらなさそうに舌打ちをしてから、望に言われた通りに大人しくソファへと腰を下ろす。  だが、和也は望の言葉の雰囲気で何か気付いたようで、チラリと望の方に視線を向ける。  望はいつも通りに机に向かって仕事をしているようだが、顔は気持ち的に強張って見えるのは気のせいだろうか。そして、極め付けは貧乏ゆすりをしていることだ。 「ん? 何で? 望の奴……そんなに貧乏ゆすりしてんだ? 貧乏ゆすりしてるってことは、イライラしてるってことだろ?」  和也は独り言を漏らすが、すぐに側にいた裕実が口を挟んできた。 「そりゃ、望さんは雄介さんと喧嘩したからでしょうー」 「その話に関しては、俺が昼間のうちにアドバイスしただろ?」 「確かに和也は望さんにそのことについてアドバイスはしましたけど……。 それを望さんが簡単に口にすることができると思いますか? きっと、そのことについて望さんは悩んでるんだと思いますけどね」 「まぁ、そうだろうな……。 ホント、望って素直じゃない性格なんだろうな。 素直になった方が楽なんだと思うんだけどなぁ」 「和也はそういう性格なのかもしれませんけど、世の中にはいろんな人がいるんですから、みんな人それぞれ性格っていうのはあるんです。 例えば、みんな和也と同じような性格だったら楽しくないと思いますけど……。 やはり、そこは人それぞれ違うからこそ楽しいんだと思いますしね」 「そっか……確かにそうなのかもな。 じゃなきゃ裕実がこんなにも可愛い性格じゃあねぇもんなぁ」  和也はソファの背もたれに寄りかかり、そのままで頭を裕実の方へと向ける。すると、和也の視線から裕実はいつもと逆に見えて、裕実が今の和也の言葉に顔を真っ赤にしたところがハッキリと見える。 「もー! 和也の馬鹿! やっぱり、和也みたいな性格の人が沢山いたら嫌ですよね!」  そう言うと裕実は和也から視線を離し、再び掃除を始める。

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