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ー過去ー61

「後は望さんの承諾を得るだけですね。とりあえず、僕が望さんに聞いてきますから」 「ああ、そうだな。俺から言うと断られそうだし、裕実ならなんか断られなさそうな感じするしな」 「そういうことです!」  裕実は和也に笑顔を向けると、まだ仕事で机に向かっている望のもとへ向かった。 「望さん、仕事中に申し訳ございません。今日、僕たちが望さんの家に行っても構いませんか?」 「え? あ、ああ……いいけど? 珍しいよな? 裕実からそう聞いてくるなんてさ」  だが、そんな裕実に何か思いついたのか、 「さては、和也が俺に言うと断られそうだったから、和也じゃなくて裕実に言わせたんだろ?」  裕実はクスクスと笑い、 「望さん、残念でした……。半分は合ってますが半分は違いますからね。だって、今日は僕が望さんの家に行きたいって言ったんですから。合ってたのは『和也に聞きに行かせると断られるかもしれない』の方だけです」 「そっか……」  裕実は、今和也と話していたことを素直に望に話した。だからだろうか。先ほどまでイライラしていた望も、笑顔で裕実と話をしていた。 「では、申し訳ないんですけど……今日も望さんのところに遊びに行かせてもらいますね」 「分かった。でも、しばらく仕事が終わらないから待っててくれよ」 「はい!」  裕実は笑顔で大きな返事をすると、和也が座っているソファへと向かった。 「望さん、いいって言ってくれましたよ」 「さすがに、望も裕実には断らないと思ったぜ」 「さすが、和也は望さんの性格をよく知ってますね」 「んー、それは本気で褒めてんのか? それとも、嫉妬してんのか?」 「もー、和也ったらー、そこまで勘ぐらないでくださいよ」  裕実は頰を膨らませ、 「和也の想像にお任せします!」  とだけ言い、和也から視線を外し、どうやら反対側を向いてしまったようだ。 「悪かったよ。ごめん……ホント! そこは俺の悪い癖だよな。裕実……謝るから許してくれよ」  和也は本気で悪いと思っているのか、真剣な顔で手を合わせ、裕実に頭を下げた。 「もー! 和也……そこまでされたら、許さないわけにはいかないでしょー」  裕実は膨らませていた頰を戻し、いつもの顔に戻った。

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