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ー過去ー62

「分かりました。許しますから、和也……顔を上げてくれませんか?ここで僕が許さなかったら、僕たちまで喧嘩することになってしまいますからね」  和也は裕実から許しをもらうと顔を上げ、 「確かにそうだよな。望と雄介が喧嘩している中で、俺たちまでが喧嘩しちまったら大変だしな」 「そうですよ。とりあえず、今は僕たちまで喧嘩っていうわけにはいきませんから」 「そだな。とりあえず、俺は人の心の中をあまり探らないようにしねぇと……恋人にまで疑われることになっちまうなんて最低だしな」 「それを使う時と使わない時と、上手く分けられるようにしてくださいね。確かに和也のその能力みたいなのは凄いところですから。でも、探られたくない時もあるんですからね」 「分かったよ。今度から気を付けるようにするよ」  ちょうど、二人の会話が途切れたところで、望の声が響き渡る。 「終わったっと!」 「終わったのか?お疲れ様」  と和也は普通に言ったつもりだったのだが、 「か、和也!?急にどうしたんだ?」 「は?何がだよ……。何もそんな驚いた顔で言わなくてもいいだろうがー。普通に『お疲れ様』を言って何が悪いんだよー。まったく失礼だよなー」 「和也にそんな真面目に言われると、悪いんだけど……気持ち悪いんだけどな」 「なんだよー。なら、いつものように、でかい声でふざけたように言った方が良かったのか?」 「あー、それはもっと勘弁……」 「なら、文句言うなよなー。まったく真面目に言っても文句言われちゃうんだもんなー」  後半は小さな声でブツブツと言いながら、再びソファへと腰を下ろす。 「何か言い合えるほど仲がいいって言うじゃないですかー?ホント、望さんと和也って仲がいいんですね」  一瞬、和也はさっきのように裕実の意味ありげな言葉に突っ込みを入れようとしたが、さっき裕実に言われたばかりで突っ込まないようにし、 「そうだな……」  その和也の言葉に、裕実は笑顔を向ける。その裕実の笑顔に和也が気付かないわけがないだろう。 「やっぱり、お前……今の言葉で俺を試したな?」 「はい!試させてもらいましたよー。でも、今回は和也は我慢したみたいなので気にしませんでしたけどね」  『やっぱり』という顔を和也はしたのだが、 「やっぱりさぁ、お前に惚れた俺が弱いよな?」 「それって、どういう意味ですかー?」 「さーてね……」

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