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ー過去ー63

 和也は真面目な顔になると、 「別に深い意味なんてねぇよ。言葉そのまんまなんだからさ。言葉であるだろ?『惚れた弱味』ってやつ。だから、先に惚れた俺の方が弱いって意味だよ」 「和也って……本当に!今は……」  裕実はそこまで言うと、急に頭を俯かせ、小さな声で、 「僕のことが好きなんですね」  そんな小さな声でも、恋人の声なのだから一語一句逃さなかった和也は、 「当たり前だろー! 俺が一番好きなのは裕実だけなんだからよー」 「ですけどー! 昔は望さんのことばかり言ってたじゃないですかー」 「それは……流石の俺でも、しばらく望のことは忘れられなかったからな。本当に望のことが好きだったのは認める。だけど、今は裕実といることの方が幸せなんだよ。俺は本当に裕実のことが好き。むしろ、今、この関係が一番の幸せなんだって思ってる。望と雄介がくっつく前に、色々と二人が恋人同士にならないように邪魔してきたけど、途中で望のことは諦められるようになったんだ。やっぱり、人の不幸を笑うより、人の幸せを願った方がいいって思ったからさ。だから、俺は望のことを諦めて、二人が幸せになる方を選んだのさ。そしたら、裕実っていう恋人ができて幸せになれたしな」 「良かったですね」 「なーに、他人事みたいなこと言ってんだよ。俺はお前と恋人同士になれて幸せだって言ってんだぜ」 「あのですね……僕は和也のように、素直に言えないんですよ。だから、どう答えたらいいのか?っていうのが分からないだけですから」 「まぁ、確かにな……。裕実がそう答えるのが一番妥当ってとこなのかな?」 「ですよ……。でも、僕は和也が羨ましいんですよ。好きな時には好き!って素直に言えるところが羨ましいんですよね」 「まぁな。でも、裕実は無理しなくていいんだぜ。性格っていうのは人それぞれ違うんだからさ。だから、そんなことで悩むなよ。お前が俺のこと十分好きなのは分かってることなんだからさ……」  和也が裕実にそう言っていると、ふとソファの後ろの方で気配を感じる。見上げると、そこには着替え終えた望の姿があった。 「着替え終わったのか?」 「まぁな……。行くんだろ?俺ん家にさ……」 「ああ」  和也はそう言いながらソファを立ち上がる。  そして三人は部屋を出て、駐車場へと向かう。 「なあ、和也」 「ん?何?」

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