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ー過去ー64
「さっき和也が言っていたこと、雄介も同じようなことを俺に言ってたんだよ」
「さっき、俺が言ってたこと?」
「分からないのか?さっき、お前は裕実に言ってただろ?『好きだって言わなくても自分には十分に伝わってる』ってさ。その言葉、雄介も言ってたんだよ。だから、和也と雄介って考え方一緒なのかな?って思ったんだよな。言葉ってさ、自分がそう思ってないと言えないことだろ?」
「確かにそうだよな。まぁ、思っていても言えないのが裕実と望だけどな。言葉がなくても、俺には望も裕実もちゃんと伝わってるんだから、それでいいんじゃねぇのか?」
「でも、雄介的にはたまにはそういう言葉も欲しいとも言ってたけどな」
「確かにそうなのかもなぁ。言葉ってやっぱり大事なもんだからな。黙っていても恋人同士っていうのは想いは伝わるもんだけどさ。例えば、毎日のように『好き』って言葉にして言うのと言わないままでは、やっぱ、そこは違うよな?やっぱ、言葉にしてもらった方がより想いが伝わるっていうのかな?」
和也と望が話しているうちに、和也の車が停まっている駐車場へと着く。和也がドアを開けると、三人は車に乗り込んだ。
「あと、働いているときに思うのは『痛い』って素直に言ってくれない人だよな?逆に、俺たち看護師がいるのに、それを伝えてくれないんだろ?って思うときがある。でも、そんな患者さんでも、俺は顔色で判断するようにして、上手く聞き出すようにしてるよ。例えば、『今日は顔色悪いようですけど、どこか痛いところでもあるんですか?』ってな。すると、まぁ、少しではあるけど、ちゃんと答えてくれる人もいるってことなんだよな。自分から申し出るのは難しいけど、人に聞いてもらうと答える人もいるしな。まぁ、稀に頑固な人もいるけどなー。でも、そこはなんとかして聞き出すようにしてるかな?それ以上、病気が悪化しないようにな。それと、早く治して退院できるようにってところかな?」
どうやら、和也は望がいないところでは患者さんに優しく接しているようだ。
「ホント、お前が就いた看護師っていう仕事は天職なんだろうな」
「俺もそう思う!」
「そこ、調子に乗んな」
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