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ー過去ー65

「望がそう言ったから、そう言ったんだろうがー」  和也は望に聞こえないような小さな声で文句を言うと、 「ま、そろそろ行こうぜ。とりあえず、望ん家に行く前にいつものスーパーな」 「ああ」  と、望は答える。  和也はいつものように運転してスーパーへと向かう。しかし今日はなぜか道が混んでいて、なかなか車が進まない。 「車ってのは楽なんだけどさぁ、こういう渋滞ってのはめんどくさいよな」 「だけど、今日はなんでこんなに混んでるんだろ?いつもなら、この時間こんなに混んでないのにな……」 「そうなのか!?俺はたまにしかこの道使わないから知らなかったけど」 「まぁ、そうだろうけどさ。いつもはこの道、混んでないんだよ。そのたまに通るときだって渋滞してねぇだろ?」 「確かにそうだな」  本当に渋滞にハマると、車ってのは自転車や歩きよりも遅くなるものだ。和也たちの車が渋滞にハマっている間にも、自転車や歩行者が横をすり抜けて行く。それを三人は見続けていた。  ふと、車の外から聞こえてきた声に耳を傾ける和也。 「すごい事故だったなぁ。車の正面衝突だったんだってさ」 「車があんなにペチャンコになるほどだったもんねぇ」  それを聞いた和也は、 「事故渋滞らしいな。さっき通りかかった人が言ってたし」 「そっか……事故渋滞だったんだな。そりゃあ、普段渋滞しないところでも渋滞するよな」 「だな」  とりあえず、わずかずつではあるが、車は動いている。  だが、病院の駐車場を出てからすでに三十分が過ぎようとしている。いつもなら病院の駐車場から望の家までは十分くらいで着くのだが、すでに三倍以上の時間がかかっていた。  車はゆっくりと事故現場へと近づいていく。 「やっぱり、さっきの二人が言ってたことは本当だったんだな」  どうやら、和也の運転席から事故現場が見えてきたようだ。  そのとき、和也は急に大声を上げた。 「あ!雄介!」  その和也の言葉に望は体をびくりとさせたが、今、望は雄介と喧嘩している。だからなのか、その和也の言葉に後部座席に座っている望は雄介のことを見ないように、顔を伏せていた。 「確かに……あんな状況じゃ、レスキュー隊の出番なのかもな……」  望が反応しないので、裕実が和也の言っている事故現場を覗き込んだ。

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