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ー過去ー68
望は後のことを救急隊員に託し、現場で体を伸ばしていると、
「終わったのか?」
「ああ、終わった。雄介たちの救助が早かったおかげで、俺も助けることができたからな」
「なら、良かったー。さすがの俺だって心配だったんだからなー。確かに車に残るって言ったけどよ……本当は助けに向かいたかったんだぜ。でも、さすがに車をあそこに止めておくわけにはいかなかったからな」
「分かってるよ。今回は仕方ないだろ?車があったんだからさ」
「まぁな」
望と裕実が人を救助し、和也が望の家に車を置いて戻り、会話をしていると、そこに雄介がやって来て、
「今日はありがとうな……」
その言葉に反応したのは望で、雄介に向かって顔を上げると、
「礼を言うのは俺たちもだよ。雄介が救助してくれなかったら、俺たちの出番はなかったわけだしな」
「ん、まぁ……そうやねんけどなぁ?俺たちからしてみたら、こんなこと、当たり前のことやしな」
「俺たちの方だって当たり前の仕事なんだしな。だから、雄介にお礼を言われる筋合いはねぇよ」
「まぁ、そうやねんけど……」
雄介にしては珍しく、顔を赤くして視線を外し、少しうつむいているようだ。
それでも、身長が高い雄介の表情は望にはよく見えていた。
「雄介?どうしたんだ?」
望は心配そうに雄介の顔を覗き込む。
「あのな……この前のことは……」
雄介がそこまで言うと、望の方も彼の言いたいことが分かったのか、
「俺が悪かった……」
雄介がなかなか言い出せない言葉を、望が先に口を開く。
その望の言葉に、雄介は一瞬目を丸くしたが、すぐに笑顔になると、
「いいや……俺の方も悪いし……俺の方も謝るわぁ」
雄介も望に向かって謝るのだった。
「別にいいよ。今更考えると、下らないことで喧嘩したと思うしさ……」
「ああ、まぁ……確かにそうやねんけどな……俺も愚痴を言ってスマンって思ってるしな」
「ああ、だけど、もういいだろ?これ以上言ってても平行線のままだしさ」
「せやな」
雄介は望から視線を外すと、今度は和也の方に向き直し、
「きっと、お前のことやから、望から喧嘩の話を聞いてると思うねんけど……あのさ……」
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