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ー過去ー79
「きっと、和也は恋人には優しいんだと思います。僕は和也が意地悪な人間だって思ったことはありませんからね」
「ふーん……」
そう望は興味なさそうに答える。確かに和也のことは望から振ったものの、実際にはあまり興味がない話で、ただ単に話題を変えるために振っただけなのだから。
「でも、確かに望さんと和也は友達同士の方が良かったのかもしれませんね。もし恋人同士だったら長く持たないような気がしますよ。だって、なんかお二人とも喧嘩ばかりしている感じですから。多分、今の友達関係くらいが似合っているのかもしれませんね」
「だな……。俺の方もそれは思うわぁ。アイツとは友達同士でいるのがいいんだと思う。前にさ……和也に告白されたことはあったんだけど、まぁ、雄介が告白してこなくても俺は和也のことを振っていたかもしれないからな……」
「そうなんですかー?」
「まぁ、なんか違うっていうのかな? 何だろ、そこは分からないんだけどさ……雄介と和也じゃ、なんかこう何かが違うんだよ。それが分かればいいんだけど、そこは分からないままだからさ。それに、和也と恋人同士になったら、仕事しにくそうなんじゃねぇかな?アイツさ……仕事中でも構わずベタベタってしてきそうだしな」
「それは無いと思いますよ。実際、僕の方は和也にそんなことされた記憶はないですからね。まぁ、唯一あるとしたら休憩時間のときくらいですしね」
「いやー、そこはさ、お前と和也は離れて仕事してるからじゃねぇ?だから、仕事中に手を出してこないとか?」
「流石の俺でもそんなことはしねぇよ!」
そう会話に入ってきたのは和也だ。どうやら和也の方は料理を作り終え、ソファへと来ると、それを跨いで和也にしては珍しく望の隣に座るのだ。
「例え望が恋人だったとしても、仕事中には手は絶対に出さないな。だって、現に裕実にだって手を出したことはねぇだろ?」
和也は裕実に振ると、裕実はその和也からの振りに気づいたのか、頭を頷かせる。
「……って、いつから俺達の会話を聞いてたんだ?」
望は和也に向かって目を細めながら問う。
「今さっきからかな? でもさ、今なら分かるけど、俺と望は恋人同士にならなくて良かったんだと思う。今更なんだけど、今の関係が一番だと思うんだよな。それが幸せだって思うしよ。ってか、楽っていうのかな? もし望と俺が恋人同士だったら、俺達はこんな関係でいられなかったと思う。でもさ、運命って凄いよな?俺が望のことを諦めたら、俺には裕実という人間が現れたんだしな。俺はその方が全然幸せだって思ってるしよ」
「なら、いいんじゃねぇのか? あのな……ってか、俺の方はお前等の惚気話聞いてる余裕なんてねぇんだよ」
和也は、そんな望の言葉にクスリと笑う。
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