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ー過去ー80

「望からそんな言葉が出てくるとはなぁ」  その和也の言葉に焦る望。 「ちょ! お、俺が何を言ったー!?」 「何も言ってはねぇぜ。でも、こう心の中では嫉妬っていうのか、羨ましいっていうのか……そんなニュアンスだったっいうのかな? そうそう、『今日は俺には雄介がいないんだ』ってな」 「俺はただお前等の惚気話を聞きたくないって言っただけで……」 「だから、その言葉だって言ってんのー」  和也が言いたいことがやっと望にも分かったのであろう。望の方は言葉を返せなくなってしまったのか、黙ってしまうのだった。 「反論できないってことは、そういうことだろ?」  そう和也の方は勝ち誇ったように言うのだが、その和也の言葉に口を挟んだのは裕実だ。 「和也ー、望さんのことイジメないでくださいよー」 「イジメてるんじゃなくて、いじってるのー」 「どっちも似たような意味ですからー」  そう裕実は頬を膨らませてまで和也に訴えるのだ。 「分かったって……。なんなんだよー、二人してー。むしろ俺の方がイジメられてんじゃんか……」  今度、頬を膨らませたのは和也だ。それに気づいた裕実は、 「和也!」  そう言ったのにも関わらず、裕実のことを無視している和也。 「もー! もう、和也のことイジメませんから、無視しないでくださいよー」 「本当にか!?」  和也の性格というのは本当に単純で、その裕実の言葉に振り向くと、 「はい!」  と裕実の笑顔が飛び込んできた。 「分かったよ。ここで俺の方が頷かないとマジで喧嘩になっちまうし、平行線になっちまうからな。まぁ、とりあえず約束だぞ。俺の方はお前等に手を組まれたら勝てないんだからな……」 「分かりましたよ……」 「まぁ、とりあえず、飯できたしー、ご飯にしようぜ」  和也の方はソファから立ち上がると再びキッチンの方に向かう。  その後、望の方も立ち上がるとキッチンの方へと向かうのだ。  そして望にしては珍しく、 「手伝うよ。後、運ぶだけだろ?」 「別にそこは大丈夫だからさ……」  そう和也に言われたものの、 「いいんだ……。俺が手伝いたいから手伝うんだからさ……そんなことって滅多にないことだろ?」  望の言葉に和也は笑顔になると、 「分かったよ……ありがとう」 「ああ……」  望は和也に言われた通りに、和也が作ってくれた料理をテーブルへと運んでいく。 「僕も手伝いますよ!」 「そうだな。みんなでやった方が早く食べれるしな」 「はい!」

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