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ー過去ー81
それから三人はテーブルを囲んで食事を始めた。
「望さぁ、雄介と付き合い始めて何か楽しいこととかあったか?」
「なんだよ、いきなり」
「ん? ただ聞いてみたかっただけだよ。だってさ、雄介と付き合いだしてから望が幸せそうに見えるんだよな」
「ん? まぁ……幸せっちゃ幸せだけどな」
「それだけかよ。それだけじゃ会話が続かないだろ? 会話っていうのはな……」
何だか説教じみたことを言い始めた和也に、
「分かってるよ。お前が変な質問をするからだろ? ってか、知ってんじゃねぇか……俺が雄介のことをそんなに話さないってことくらい」
「だって、話すことがないからさ、望に振っただけだよ」
和也としては普通に話題を振ったつもりだったが、裕実が和也を見上げて、
「和也、さっき約束しませんでした? 望さんをいじめないって」
「べ、別にいじめてなんかいないだろうが!」
「望さんが嫌がってるなら、それはイジメと同じです」
「はいはい、分かりましたよー。そしたら俺たちの話をすることになるけどいいのか?」
「僕は全然構いませんけどね」
「なら!」
そう元気よく言った和也だったが、次の瞬間、裕実に思いっきり突っ込まれる。
「確かに僕はいいとは言いましたけど、望さんに確認しなくていいんですか?」
「あー、そうだったな」
裕実の指摘に項垂れる和也。しかし次の瞬間、顔を望のほうに向けた。望もそれに気付いたのか、
「俺は別にお前らの話でもいいよ」
「なんだよ、望もなのかよ! じゃあ、どんな話をすればいいんだ? それとも会話なしってか?」
「俺は全然会話なしでもいいくらいだけどな。たまには静かに食事したい時もあるしな」
「それだと、俺が!」
「俺が……何だよ……」
「死んじまうー!」
「アホか! そんくらいじゃ人間は死なねぇよ……」
望の冷静な突っ込みに、和也はため息を漏らした。
「あのさぁ、俺が黙ってるの無理なの知ってるだろ」
「ああ、まぁ……長年お前といるからな、それくらいは分かるけどよ」
「なら、何か話させてくれよ」
「んじゃ、俺と雄介のこと、お前と裕実のこと以外なら何を言ってもいいぜ」
「そんなこと言ったら、仕事のことしかねぇじゃん! 帰って来てまで仕事の話とかしたくねぇんだけどな」
「なら、それ以外だな」
「それは……無い」
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