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ー過去ー82

「じゃあ、逆に大人しくご飯を食べろよな……」  結局、食事中は黙って食べるべきだ、という結論に落ち着いたらしい。和也はため息をつくと、一気に口の中にご飯を掻き込んで、 「満足ー! やっと! これで腹が満たされたって感じがしてきたわぁ」  お腹がいっぱいになった和也は、本当に満足そうな笑みを浮かべていた。 「なら、良かったな……」  そんな中、裕実が顔を上げ、 「和也……この天ぷら美味しいですよ」  その言葉に和也は満面の笑みで答えた。 「そりゃ、そうだろ! だってよ、そこには愛情がいっぱい入ってるんだから美味しいに決まってるじゃん!」  どうやら和也は褒められると調子に乗るタイプらしい。さっきまでとは違い、今にもイスの上で踊り出しそうな勢いだ。  そんな和也の様子に、望は今にもキレそうな雰囲気だ。拳を震わせているのだから、その怒りは明らかだ。 「マジで和也うるせぇ」 「あー、もー、分かったよ……大人しくしてればいいんだろ?」  さすがの和也も、望のオーラには敵わないらしく、大人しくなるのだった。  それから裕実と望も食事を終え、 「ごちそうさまでした」  裕実がそう言うと和也のほうを見て、 「お皿洗うの僕がやりますよ。だから、今度は和也はゆっくりしてて下さいね」 「そっか……ありがとう」  和也はそう言い、ソファへ向かうとテレビのリモコンでテレビをつけた。  その後、部屋には和也の笑い声が響き渡る。  どうやらバラエティ番組を見ているらしい。和也の笑い声だけが部屋中に響き、望はため息を漏らした。  望も食べ終えると裕実のところへ向かい、 「手伝ってやるよ」 「ありがとうございます。じゃあ、望さんはお皿を拭いて下さいね」 「……で、後は片付けるだけだな」 「はい!」  望は裕実の指示に従い、皿を拭いて棚へ戻す。  そんな中でも和也はまだバラエティ番組を見続け、笑い声を響かせていた。 「まったく、なんで和也ってあんなにうるさいのかな?」 「でも、和也が逆に大人しかったら怖くないですか?」  その裕実の言葉に望は目を丸くする。 「だから、和也が静かにしてたら、逆に怖くないですか?」 「ああ、まぁ……確かにそうなのかもな……」

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