1349 / 1471

ー過去ー83

「そうですよねー」 「まぁな……。やっぱり、お前と和也はお似合いのカップルなんだよな。俺なら、そこまで和也のことを褒めるなんてできねぇからさ」 「確かに、望さんの性格でしたらそうですよね」  その裕実の言葉に、望はクスリと笑う。 「お前も言うようになったなぁ」 「はい! ちょっとずつ頑張ってみることにしてみましたから」 「ああ、その調子でいいんだぜ。ただし、和也みたく、ふざけていい時とそうじゃない時を上手く使い分けるんだぞ」 「大丈夫ですよー」 「確かに、お前なら大丈夫そうだけどな」  望はそう言いながら、最後のお皿を戸棚へしまう。 「これで片付けおしまい!」 「はい!」  裕実は望の言葉に大きな返事をすると、 「じゃあ、僕たちもゆっくりしましょうか?」 「そうだなー。ただ、今は和也のところには行きたくないって感じかな?」  望は呆れたようにため息をつく。 「じゃあ、僕が和也にビシッと言ってきますよ!望さんが好きじゃない番組じゃ、みんなが楽しめないからってね」 「あ、ああ……おう……」  裕実の意外な言葉に、望はどう返答すればいいのか分からず、とりあえず返事だけする。裕実は本気で和也のところへ向かったようだ。 「ん?まあ、ちょうど番組も終わったところだし、望が好きなのを見てもいいぜ。って言っても、この時間からじゃニュースしかやってないだろうけどな」  裕実は笑顔で和也を見上げる。和也はリモコンでチャンネルを変えると、 「その間に俺は風呂に入ってくるなぁ」  そう言う和也だが、今日はいつもより元気がないようにも見える。普段なら、ここで裕実と一緒に入るー、と騒ぎそうなものなのに、今日はそんな言葉もない。むしろ、「一人で風呂に入ってくる」と言うのだから。 「望……風呂借りるな……」 「ああ……」  そう言って和也はソファを立ち、本当に裕実を誘わずにお風呂場へ向かう。 「アイツ、どうしちまったんだろ?」  望は、和也の行動に首を傾げながら、さっき和也が座っていたソファに腰を下ろす。 「確かにそうですよねぇ。いつもの和也だったら僕を誘って、それで望さんと言い合いになってるのに……。まぁ、少し成長したってことなんですかね?」  裕実も首を傾げる。 「あ!いつもなら和也は僕を誘って『お風呂に一緒に入るー』って言うじゃないですか。それで毎回のように望さんと和也が言い合いになってて、でも今日は誘わなかったってことは、『毎回そんなことをするのがバカらしくなった』って思ったから、今日は言わなかったのかな?だから成長したのかなって思ったんですよ」 「まぁ、それならいいんだけどなぁ」

ともだちにシェアしよう!