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ー過去ー91

「そっか……。ならさ、俺が実琴の事で決着が着いたら、今度こそ思いっきり裕実と恋愛して、恋人気分を満喫してくれねぇか? 今はまだ確かに中途半端な時期でもあるしよ。だから、俺の方も今は我慢する……それでいいだろ?」  その和也の問いに裕実の方は頷いた。 「分かった……。じゃあ、俺は実琴の事が決着するまで、裕実とはヤらない」  今までベッドの上に半身を起こして裕実と話をしていた和也だったが、話を終えるとベッドの上へと仰向けになった。 「おやすみ……裕実……」 「おやすみなさい」  そう二人はそのまま何もしないまま、今日は眠りについた。  そして次の朝。裕実と和也はアラームで目を覚ますとリビングへと向かう。  すると、望がキッチンへと立っていて何か料理をしている姿が目に入ってきた。  和也は口の前で人差し指を立て、裕実には静かにするように指示を出した。その後、和也は忍足で望のところへと近づく。  それから和也は望の後ろに付くと、大きな声で、 「わぁ!」  と言うのだが、和也が思っていたような反応はなく、目を座らせ、和也のことをジッと見つめる望の姿だった。  逆にその望の姿に驚いたのは和也の方なのかもしれない。 「ど、どうしたんだ……の、望……?」  そう、その望の反応に和也は顔を引きつらせながら後退りをしたが、和也の後ろにはテーブルがあったからか、和也の足が自然とそこで止まってしまう。 「今日はいつもの和也で良かったなぁ。昨日の夜はあんなに大人しかったのにな……ホント、昨日の和也と比べたらマジで元気があり過ぎて、何だか昨日の夜、心配になって損した気分だぜ」  望は呆れた顔をしながらため息を吐いた。 「だ、だから、アレはだなぁ」  いつもなら何とか上手く誤魔化す事ができる和也だったが、どうやら今は誤魔化せずにいる。 「ア・レ……ってなんだろうな?」  和也は裕実に助け舟を求めたのだが、和也が何も誤魔化す事ができないので、当然、裕実だって誤魔化す事などできないだろう。  裕実は和也に向かって顔を手で交互に動かし、顔色までも変えてしまっている。だから、全く裕実には何もできない状態なのかもしれない。  和也はため息を吐くと、望に向かい、土下座までする。 「本当にゴメン! 昨日は俺の我がままでああしたんだよ。ただ、裕実と二人きりになりたくて、いつもとは逆の事をしただけなんだからさ。それで、裕実と望を心配させてしまっていたのなら、俺が昨日やった事は悪いと思っているからな。昨日の事は許してくれとは言わない。本当にそこは俺の我がままな行動がいけなかったんだからさぁ。だから、そん時にも裕実にも誓った。 また、今度同じことを繰り返したなら、裕実と別れるとまで言ったんだ。もう、こんな事は二度としないからよ」

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