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ー過去ー102

「ホンマに!? めっちゃ、望はええ子やったんやなぁ。俺なんか、しょっちゅう親に怒られっぱなしやったわぁ。泥まみれになって帰って来ては怒られて、友達と遊びすぎて夜八時に帰って来てはまた怒られてー、ほんで、謝るの繰り返し。まぁ、謝っても反省してへんかったから、毎回怒られとったんやけどな」  雄介は笑いながら、自分の子供時代を語る。過去の話だからこそ、笑えるのかもしれない。 「ま、望に素直になれっていうのは二の次で……とりあえず、喧嘩したら謝るって思った方がええのかもしれへんなぁ。ってか、望は和也のこと嫌いなんか?」 「いや……嫌いじゃないな。何か分かねぇけど、アイツと話してるとホッとするっていうのかな?」 「嫌いじゃないんやったら、余計に謝った方がええんと違う? 和也と喧嘩したままやったら、仕事に支障が出るんと違うの?」  雄介の言葉に、望はハッとしたように顔を上げる。 「今さ……ある事情で和也と俺、仕事してねぇんだよ。今は裕実と一緒に仕事してんだけどさ」 「何で? どないしたん? いつの間に和也と裕実が交代したん? へ? ホンマ、何があったんや?」 「実はさ……」  望は昨日の朝から今日までの出来事を雄介に話し始める。 「あー! そういうことやったんかぁ。でも、流石に和也と裕実をいきなり交代させるんは、ちょっと不自然やろなぁ。新城のことやから、何か気付いてるんと違う? 和也の元恋人さんが昔付き合ってたってことまでは気付かへんくても、何かあるんやろな、くらいには思っとるやろな」 「だよな。それで和也が本宮くんと新城の間に入ったら、新城のことだから逆に気付くかもしれねぇしな」 「完全に気付かれる前に、何か手を打っとかんと……って感じやな。ほんま、俺がいない間にそんなことが起こっとったんか」 「まぁな。一日って短いようで長いよな?」 「せやな……たった一日でそんなことが起こってまうんやなぁ」 「ああ……でも、和也と裕実っていいよな。同じ仕事場で働けてるんだもんよ。確かに離れて仕事してるけど、一日最低でも一回は仕事場で会えるわけだし、こう……心配しなくてもいい感じだよな」  その望の言葉に、雄介は少し黙った。やがて、静かに口を開く。 「な、今のって……本音なんか?」

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