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ー過去ー103

 その雄介の言葉に、望は自分が言ってしまったことにすぐ気付いたようだ。 「あ、いや……だからだな……」  しどろもどろになる望。何とか誤魔化そうと言葉を探しているようだが、うまく見つからないらしい。 「あ、だからだな……」  雄介は、望の言葉の続きを待っている。じっと望の顔を見つめているのだから、気になって仕方がないのだろう。 「だから……それは……」  とうとう誤魔化せないと悟ったのか、望は雄介から視線を外し、ぽつりと呟いた。 「本音なんだろうな……。そういうこと、無意識のうちに口にしてたんだからさ」  相変わらず素直になれない望。しかし、それでもこの言葉だけで雄介にとっては十分だったのかもしれない。  雄介はクスリと笑い、軽く肩をすくめる。 「最近の望は素直になれてきたやんか……特に俺の前ではな」 「まぁ、そこは……まだ雄介だけだからな」 「そんでも成長しとるってことやろ?」  望の言葉に、雄介はふと考え込むような表情を浮かべた。肘をテーブルにつき、視線を天井に向けて何かを思案している。 「それは……ええふうに取ってもええもんなんか?」 「あ、ああ……雄介が思ってるふうに取ってもいいと思うぜ」  ここまで来たら開き直るしかない。望は顔を赤くしながらそう答えた。 「ほなら、和也にも少しずつ素直になってみたらどうなんや? そしたら、喧嘩せんで済むかもしれへんで」 「あ、ぅん……」  望はそう答えたものの、まだ自信がないようで、言葉を濁らせてしまった。 「性格って、そうそう直せるもんではないけどな。俺も和也も、望の性格を理解してたらそれでええんやけど、流石にできるときとできへんときがあるわけやんか。せやから、時と場合を考えてみたらどうや?」 「ああ、そこは努力はしてみる」 「じゃあ、望……俺のこと、どう思ってるん?」  雄介は和也のように段階を踏んで少しずつ攻めるタイプではないのだろう。しかし、それでも優しい性格で、いきなり押し付けるわけではなく、言えるタイミングを作ってくれるらしい。  一方で、和也は考えてから言葉にするタイプだが、雄介は思ったことを先に口にしてしまうタイプ。その違いが、今のこの問いかけに表れているのかもしれない。 「ど、どう思って……あ、そうだな……」  望は再び顔を俯かせ、真っ赤な顔で一生懸命答えようとしている。

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