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ー過去ー104
雄介は、望の答えが出るまで微笑みながら待っていた。
「簡単なことやろ?」
「なら、お前は簡単に言えるのかよ」
「ああ、むっちゃ簡単やん。人を助けることよりも簡単なことやで。俺はな、ホンマに望のこと好きやと思うとる」
雄介はさらりと自分の気持ちを口にするが、望はまだそう簡単には言えないようだ。
「ええよ……ゆっくりで……。俺はその望の答えが出るまで待っとるからな」
暫くして、望は答えを出したのだろうか。相変わらず俯いたままだが、少しずつ口が動き始めた。
「ぁ……その……俺は……」
きっと、今の望の心臓は口から飛び出しそうなほどドキドキしているのだろう。
「俺も……雄介と同じ気持ちだからさ……」
望の答えを聞いた雄介は、軽く笑って応じる。
「それやと、まだ八十点位やな……。今の俺なら百点満点で分かるけど、昔の俺やったら八十点位にしか気持ちが伝わってへんと思うしな。まぁ、真剣な目でそないなこと言われたら、めっちゃ今の俺的には嬉しいねんけど。せやけど、望は素直な性格になりたいんやろ? それなら、たった二文字入れるだけで百点になれるんやけどなぁ」
「あ、そうか……そうだったな……悪い。まだ、そこは俺にはできねぇのかも」
「ええって……いきなり俺がそないな質問したのがあかんかったんやしな。ちょっとずつって言うたのに『好き』を言えって言うたのは、流石に無理あったよな」
望がうまく言えなかったことに対して、雄介は自分が悪かったとフォローする。
「でも、雄介……ありがとうな……こんなつまらないことに付き合わせちまって……こういうことって本当は、小さい頃に親から教わるもんなんだよな?」
「性格はまた別やろ? 望の場合、それに気付いて直そうとしてるんやから、それだけですごいことやと思うで。そこは俺が手伝ったるし、少しずつやっていこうや」
雄介は望の肩を軽く叩くと、食べ終えた食器を流しに持って行き、そのまま洗い始めた。
だが、望はまだテーブルで顔を俯けたままだった。
リビングに水音が響く中、俯いていた望が急に顔を上げた。
「ゆ、雄介……」
「ん? 何や?」
「今日さ……」
そこまで言ったものの、望は再び顔を俯かせてしまった。
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