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ー過去ー105
「……お、お前と一緒に……今日は……あのさ、風呂に入りたいかなぁ?」
ここまで言うのに何分、何秒かかったかは分からないが、先ほどよりは成長してきたと言えるだろう。
「ええよ……。ほな、皿洗ったらな、風呂の用意してくるし」
「え? あ、いいよ……俺がしてくるからさ!」
望はそう言うと急に立ち上がり、お風呂場へと向かって行ってしまった。きっと赤くなった顔を雄介に見せないためだろう。
「ま、ええか……」
本当は雄介が風呂の支度をしようとしていたのだが、望が行ってしまったため、雄介はそのまま皿洗いを続ける。しかし、今日の雄介はいつも以上に浮かれているようだ。さっき望に「一緒にお風呂に入りたい」と言われたからだろう。しかも鼻歌まで歌っているのだから、雄介のご機嫌は絶好調なのかもしれない。
「やっぱ、望って可愛いわぁ。今さっきの望の言葉に俺のムスコさんにドストライクやったしな。ま、でもな……今度の休みまで我慢やで……せやせや、我慢我慢。あー、でも、まぁ、望次第では考えてもええねんけどなぁ」
雄介はニヤけながら長い独り言を呟く。
その後、望がリビングに顔を出して言う。
「じゃあ、俺先に風呂に行ってるからな……」
「ああ、おう。お皿洗い終えたし、俺もすぐ行くし」
「ああ、待ってる」
望は雄介にそう言うと早々にリビングを後にし、お風呂場へと向かった。
望はまだ顔の赤みが取れていない。望にとって、本当に素直になるということは勇気がいることで、恥ずかしさが込み上げているのだろう。
望は浴槽に浸かりながら水音を立てて顔を洗う。
すると、雄介もやっと脱衣所へ来たようで、すりガラス越しに人影が見える。
望は「一緒に風呂に入ろう」と言ったものの、今さらながら恥ずかしさがこみ上げてきたのか、目のやり場に困り、瞳を宙に浮かばせてキョロキョロとしている。
間もなくお風呂場と脱衣所を繋ぐドアが開き、雄介がゆっくりとお風呂場へ入ってきた。
「眼鏡のない望を見るのは久しぶりのような感じがするわぁ」
「そ、それは……仕方ねぇだろ? 流石にお風呂に眼鏡なんか掛けて入らないんだしよ」
その望の言葉に、雄介は無言で望の顔を覗き込む。
「ちょ、おい! な、なんだよ……」
「いやな……素直やないなーって思ってな」
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