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ー過去ー112
「ええって……今は一分でも一秒でもお前の側に居たいしな。休みん時にはとことん楽しませてもらうし……それで、俺は十分なんやって」
雄介はそう言うと、望の体を抱き締める。
「お前っていう奴は本当に優し過ぎ。確かに和也も優しいんだけどさ、お前の場合には和也より優しいんだよ」
「ええねんって……望にそう言ってもらえるんやったら、いっぱい優しくするしな。もう! 俺的には望だけおったら十分やしな」
望はその雄介の言葉に安心したかのようなため息を吐くと、
「そっか……。まぁ、いいや……そろそろ寝ようぜ。疲れちまってるからさ」
「せやな!」
雄介は体を起こすとベッドへと寝直した。
「ほな、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
二人は目を瞑ると、そのまま夢の中へと落ちていく。
そして次の朝。いつものように望がアラームで起きた時には隣に雄介の姿はなく、ベッドの上に半身だけ起こすと、階下からいい匂いが漂ってきているようだ。
望はすぐにシャツとズボンだけ着替えると階下へと降りていく。
「雄介……何でいつもこんなに早いんだ? 確かアラームは同じ時刻にかけてるよな?」
「んー、なんやろ? 寝てるには寝てんねんけど……アラームより三十分前位に目が覚めてもうて、一度目が覚めると二度寝できへんしなぁ。せやから、そのまま起きてご飯作ってんのや」
「そうだったのかぁ」
「まぁ、そういう事なんやって。三十分前やったら二度寝してもしゃーないし……そのまま起きた方がええって思うてな」
「確かにそうなんだけどよ。でも、俺はギリギリに起きちまうんだよな」
「それはそれでええんと違う? そこは人それぞれなんやしなぁ」
「確かにな」
雄介は間を開けると、
「ほい! 飯出来たでー! これ食べて……今日も頑張ろうや!」
「そだな」
二人はご飯を食べ終えると、雄介は先に家を出て行く。
二人にとっては長い一日の始まりだ。
いつものように病院の駐車場に到着する望。
フッと和也が止めている駐車場へと視線を向けると、そこにはもう和也の車が止まっていた。
「もう、和也来てたんだな。和也が早く来てるなんて珍しいよなぁ」
そう何気なしに呟く望。
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