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ー過去ー122
そうして、さっき頼んだメニューが運ばれてきた。
和也は恥ずかしい場面を見られなかったことに胸を撫で下ろす。
店員が去った後、
「とりあえず、飯を食いに来たんだから、食ってからにしろよ。また、話の展開があるかもしれねぇだろ?」
「確かに気になる所ではあるんだけどよ……『腹が減っては戦はできぬ』って言うしなぁ。めっちゃ腹減ってるし、とりあえず食ってから聞くことにするかぁ!」
和也は笑顔になり、テーブルについた。
「本当、この焼肉屋に来たのって久しぶりだよなぁ? 望と最後に行ったのって……雄介がまだ最初の頃に入院して来た時か?」
「確か、そうかなぁ? もう随分前のことだから忘れちまったけど」
「ま、今まで色々な事あったしな」
「まぁな……」
「でも、望が記憶無くした時が一番焦った事だったのかもしれねぇなぁ?」
「つーか、あん時の俺ってどうだったんだ!?」
「あん時は雄介に対して積極的だったっていうのかな? 雄介はさぁ、記憶の無いお前との事で悩んでて、それで間柄っていうの? やっぱ、記憶の無い望だろ? だからさ、いきなり『恋人でしたー』って言える訳がねぇじゃん! で、悩んだ挙句、雄介と望の間柄っていうのは恋人ではなく従兄弟っていう風にした訳だ。でも、それは直ぐに望にバレちまったみたいで、仕方なく雄介は望に恋人だったって話したら、なーんか知らないんだけど望は雄介に対して積極的になったっていうのかな? で、雄介の方は『こんな望は望じゃねぇ!』って言ってて、俺に望を預けてレスキュー隊員になる訓練を受けに行っちゃったって訳だ」
「そうだったのかぁ。まぁ、雄介は今の俺の方が好きだって言ってるしな……」
最後の方は小さな声で言ったからなのか、どうやら地獄耳の和也でも聞こえていなかったらしい。いや、その地獄耳が使えるのは、きっと今の和也からしてみたら裕実だけなんだろう。
「それでもさぁ、本当に今まで色々あったよなぁ。大きな地震っていうのもあったしさ。後は事故に巻き込まれたりー。あー! 望はハイジャックにも巻き込まれた事あったんだっけ?」
「あー! そんな事もあったよな? しっかし、和也の知り合いだっていう白井だっけ? アイツはホント、口だけは達者って感じだったな……」
「だから、アイツは本当に使えないって言ってんだろ?」
「確かにな……。あん時、一番に頑張っていたのは雄介だったからなぁ。あん時の雄介っていうのはさ、いつもよりカッコよく見えたっていうのかな? 怪我までしてんのに操縦席に座って飛行機を操縦して乗客全員を無事に下ろしたんだからさ」
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