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ー過去ー138
「そうですよー。和也の事待ってたら、お腹空き過ぎちゃいますからー」
「……んでもさ」
和也は話を続けようとしたのだが、今日は記念日だということを思い出したのか、そこで言葉を止めた。
「ま、いいや……俺が買って来た分は、帰ってから裕実と食べるよ。やっと、俺達の方もちゃんとした恋人になれたんだしな」
その和也の言葉に、今まで呆れたような表情をしていた望と裕実だったが、望の方は軽く微笑み、裕実の方は椅子から立ち上がった。
「本当ですか!?」
「俺がそんな事で嘘吐く訳ねぇだろ。寧ろ、こんな嬉しい事で嘘なんか吐いてどうするんだよー」
そう言いながら、和也は椅子へと腰を下ろした。
「どういう事なんですか?」
「ま、とりあえず、俺達の話は後でな……今は望が主役なんだからよ」
「そうでしたね」
和也のその言葉に、裕実は大人しく椅子へと腰を下ろした。同時に和也は蝋燭に火を付け、電気を消し、いきなりソロで誕生日の歌を歌い始める。初めは裕実は歌わなかったが、和也に促され、一緒に歌い始めた。
歌が終わると、望は蝋燭の火を吹き消し、その直後に和也が電気を付けた。
「なんだか、今更、誕生日のお祝いされると照れ臭いもんなんだな」
「気にすんなよ……ただ単に俺がしてやりたかっただけなんだからよ。ま、まぁ……とりあえず、もう後はご飯食うだけだろ? 気楽に行こうぜ。望もその方がいいんだろうしな」
「まぁな……」
「だから、いつも通りにしてたらいいんだしよ。だからって、俺が主役ではないんだから、俺がやりたいようにしようっていう訳でもねぇしよ」
「そうか……」
「そうそう……いつもの夕食だと思ってくれたらいいしさ」
そう何気ない和也の言葉。流石は望の性格を知っているからであろう。
和也のその何気ない言葉に、望の方は緊張が解れているようにも見える。
いつもと変わらない誕生日。
相変わらず和也が馬鹿な事を言って、望と裕実から非難を受ける事なんか、いつもの事で本当にいつもと変わらない夕食だ。和也が馬鹿な事を言うもんだから、裕実も望も笑顔が絶えることはなかった。
そう、この二人に関しては仕事の時とはいつも以上に真面目で、ほとんど笑った事さえないのだから、余計になのかもしれない。
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