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ー過去ー141
そして次の朝。
望は目を覚ますと、時計に視線を移す。今の時刻は朝の九時半。雄介が帰宅するまで約三十分。望は体と頭が完全に覚めるまでベッドで過ごすことにし、横になっていたが、ふとあることを思い出した。
そうだ。このままベッドで待っていたほうがいいのかもしれない。
雄介の仕事は二十四時間勤務で、夜中に出動があれば寝ていないこともある。それはさすがに辛いだろう。なら、望がここで雄介を待ち、午前中はそのまま雄介をベッドで休ませてからどこかに出掛ければいい。そう思ったのだ。望は雄介が帰宅するまでの約三十分をベッドで待つことに決めた。
だが、雄介は帰宅時間を十時頃と言っていたのに、時計が十時を指しても帰ってくる気配は全くない。それどころか、携帯にも何の連絡も入っていない。
雄介のことだ。望が家にいると分かっている以上、仕事が終わったら電話やメールくらい送ってくると思ったのだが、それもない。
それから十分ほど経った頃、望の携帯が震える。短時間で通知が止まったため、メールだろう。望は携帯を開き、メールの送り主を確認する。どうやら雄介ではなく、和也からのものだった。
なぜこの時間に和也からメールが来たのだろうか。和也も、今日は望が雄介と二人きりで過ごす予定だと知っている。それなのにわざわざメールを送ってくるなんて。
望は仕方なく和也からのメールを開き、内容を確認する。そこには、こう書かれていた。
『今すぐに、どのチャンネルでもいいから、ニュース見た方がいいぞ!』
その一文だけで、具体的な意味が全く分からない。
とりあえず望はベッドから降り、リビングに向かうと、ソファに腰を下ろしながらテレビを点けた。
すると、そこには自分の目を疑うような光景が映し出されていた。
現場の状況を緊迫した様子でアナウンサーが実況している。その内容をまだ把握できない望は、画面右上に目をやると『LIVE 春坂市』という文字が目に入る。
「春坂市!? ……でも、この場所、見たことない場所なんだよなぁ?」
その時、アナウンサーが実況の最初に戻り、再び原稿を読み始める。
『繰り返しお伝えします。本日、朝八時二十分頃、春坂市で爆発事故が発生しました。現場は花火工場で、死者が数十人に上る模様です。現在、現場には消防車が何十台も集まり、消火活動にあたっていますが、未だに火が収まる気配はありません』
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