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ー過去ー145

「俺達がニュースを見て、どれだけ心配したと思ってんだ!? 何で、帰る時に望に連絡して来なかったんだ? しかも、今ニュースになってる花火の事故でレスキュー隊員が一人死んでるって言ってたんだからな」  その和也の言葉に、やっと雄介はテレビの方へと視線を向ける。 「あ! この事故、こないな事になっておったんか!」  雄介は持っていた花をテーブルの上へと置くと、テレビへと近づいて行った。 「確かに事故があったのは知っておったんやけど……まさか、こないな事故になっておったって事知らんかったわぁ」  その雄介の言葉に和也は裏声を上げ、雄介の方へと振り向く。 「……へ? どういう事だ?」 「あー、この事故な……丁度、この花火工場での事故があったんは、八時半位やったやろ? その時間っていうのは丁度交代の時間なんやって……正確には俺達の仕事時間が終わるのはその周辺やから、次に来る隊員に花火工場の事故の方に回ってもらったって訳や。 それから、俺達の方は昨日あった報告書とか色々な事やっておったら、今日はちょい時間掛かってもうて、そしたら、いつの間にか十時位になっておってな。そっからは、今日の望の誕生日やったし、店も開いた時間やったから、花屋に寄っておったら、こないな時間になってもうたって訳なんやって。望に連絡しようにも両手いっぱいに花を持っておったし、ついでやから、サプライズ的な事にしようかな? って思うてたしな」  その雄介の言葉に三人は安堵のため息というのか、呆れたようなため息を漏らす。 「まったく、雄介っていうのは、俺達の気持ちっていうのは分かってねぇって事だよな」  和也が文句を言った後に、望も続けた。 「本当だぜ。お前さぁー」  望はそう言うと、雄介の前にまで足を運び、真剣な面持ちで雄介の顔を見つめる。 一瞬、平打ちが炸裂するのかと思ったが、それとは逆で望は雄介の体を確かめるように抱き締めた。 「良かった……お前が無事で……本当、俺……このニュース聞いて、どれだけ心配したと思ってんだよ。今日は俺の誕生日だぞ……デート連れて行ってくれるんじゃねぇのかよ」 「ホンマ……ゴメン。まさか、この事故がこないに大きな事故になっとるなんて事思うてなかったし、ホンマに俺の自己中心的な行動で望達を心配させてもうてたんやな……ホンマ、ゴメン……」  雄介はそう切なそうな表情をすると、望の体を抱き締め返した。  その間に和也と裕実はそっと部屋を出て行った。

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