1412 / 1471

ー過去ー146

「でも、本当に無事で良かったぜ……」  望はそう言うと、雄介の顔を見上げる。 「今日は、望の誕生日なんや……不幸せな一日じゃなく、幸せな一日にしなぁー、あかんしな」 「ああ、そうだな」 「ほな、とりあえず、似合わないって思うたんやけど、花も買うて来たし、生けてから出掛けようか?」 「そうだな。ってか、お前、こんなに買って来てどうすんだよ」 「ん? これか? 望の歳の分買うて来たんや」  そう笑顔で言う雄介の姿に流石の望も怒る気にはなれず、少し呆れたような表情をしながらも、 「とりあえず、ありがとうな」  望は人に感謝の言葉を述べる事なんて慣れていないため、少し照れ臭そうにしながらもそれを雄介へと伝える。  その間に雄介は買って来た花を花瓶へと生けるのだ。 「ほな、行こうか? その前に着替えて来るな」 「俺の方も着替えねぇと……これじゃあ、外には行けねぇだろ? 俺の方なんかまだパジャマ姿なんだからよ」  その望のその言葉でやっと望の姿に気付いたのであろう。 「あ、ホンマや。望はまだパジャマやったんか……」 「そう、改めて言うなよな。恥ずかしいだろ……。それに、今までこの格好でいたのはお前のせいなんだからな!」  そう言いながら望は雄介の事を睨み上げる。 「あ、ああ……ゴメン……。せやな……俺のせいでもあったんやな」  その雄介の言葉に望はため息を漏らすのだが、 「もう、いいよ……。着替えてから出掛けようぜ」 「せやな……」  二人は自分の部屋へと向かうと、雄介にしては珍しくクローゼットの中をあさくっていた。いつもならタンスに入っている洋服を着ているのだから。 「お前が珍しいよな? クローゼットの中から服出すなんてさ」 「この前の休みの日に、この日の為に服買うておいたんや……。ホンマは一人で着替えて、望に見せたかったんやけど……一緒に着替える事になってもうたし、しょうがあらへんから着替えてまうな」 「それなら、隣にある客間の方で着替えたらいいだろ?」 「そりゃそうやんな。ほな、着替えて来るし」

ともだちにシェアしよう!