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ー過去ー183

 流石の雄介も、今日はよほど疲れていたのだろう。  今日の二人は特に甘いムードというわけでもなく、望も自然と眠りに落ちていった。  そして次の朝。望が目を覚ますと、相変わらず雄介の方が先に起きており、ご飯の用意をしているようだった。下の方からは、焼ける匂いや食べ物の香りが漂ってくる。  望がゆっくりと階段を下りると、最初に気付いたのは雄介だった。望の方に視線を向け、笑顔で声を掛ける。 「おはよー」 「ああ、おはよー」 「今日は目玉焼きやで……」 「ああ」  望は欠伸をしながら椅子に腰を下ろし、リモコンを使ってテレビをつけた。いつものようにニュースを見始める。 「望!」  雄介がそう言いながら、できた料理をテーブルの上に置く。二人はいつものように朝食を取り、仕事の準備を済ませる。  準備が整うと、雄介は望のネクタイを掴み、自分の方に引き寄せる。そして、そのまま望の唇に自身の唇を重ねた。 「ほな、行って来るな」 「あ、ああ……おう……」  昨日も普通にこうしたやり取りがあったはずなのに、今の望は顔を真っ赤にしていた。  その後、望も準備を済ませると家を出て病院へ向かう。  望がいつもの部屋に入ると、そこには和也がいた。裕実の姿はもう見当たらない。 「あれ!? 裕実は?」 「実琴がさ……研修期間終えたから、新城の所に裕実が戻って、俺が望の所に戻って来て、実琴は違う所の医者の所に行ったみたいだぜ」 「あ、そういう事か……」  和也の言葉に、望はなぜか安心したような表情を見せた。 「……で、どうだったんだ? 裕実が俺たちに隠していた事っていうのはさ」 「んー、大したことはなかったんだけどさ……この話、長くなるから、今日、仕事終わってから裕実も混ぜて話すよ。実琴とも兄弟だったって話もしてくれたからさ。でも、望……その話を聞いて引くなよ。アイツがなかなか話してくれなかった理由っていうのは、それなんだからさ」 「そうなのか? 分かった……それは約束する」  和也が前置きをした後、二人はそれぞれ仕事へと向かった。  仕事を終えると、裕実が和也たちのいる部屋へとやって来る。三人はソファに腰を下ろした。 「裕実……このことについて、望には話していいんだろ?」  和也が裕実に確認するように尋ねると、裕実は頷いた。 「んじゃあ、望には話すな。どこから話した方がいいのかな?」  そう言って一旦言葉を切ると、和也は裕実の過去について話を始めた。

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