1452 / 1471
ー天使ー1
今日は雄介が仕事休みの日で、望は自分の仕事が終わると真っ直ぐに雄介が待っている家へと向かった。
雄介が仕事休みの日というのは、今の望にとって嬉しくて仕方がない。だって、望と雄介が恋人になってから何年も経ち、望は心から雄介のことを好きになったのだから、休みの日が待ち遠しいのは当然のことだ。
望は逸る気持ちを抑えながら、車を家へと走らせる。早く帰りたい気持ちはあるものの、交通ルールを守らなくてはならない。それでも、できるだけ早く帰りたいという気持ちが勝っていた。
そんな気持ちで今日も望は急いで帰宅したが、車を駐車場に止めた瞬間、何だか家の中がいつもと違うことに気づいた。いつもより賑やかというか、雰囲気が違うというか――そんな違和感を覚えながら、首を傾げつつ玄関へ向かう。
今日は雄介しか家にいないはずなのに、どうして家の中がこんなに賑やかに感じるのか。もしかして、和也や裕実が望に知らせずサプライズで遊びに来たのだろうか。そんなことを考えつつ、玄関を開ける。
しかし、迎えに出てくるはずの雄介が現れない。ますます首を傾げながら、望はリビングへと足を進めた。
リビングから聞こえてきたのは、大人の声ではなく、子供の甲高い声だった。この家に住んでいるのは雄介と望だけなのだから、子供の声が聞こえるはずがない。まさか、これが噂に聞く座敷童子や子供の幽霊の声だというのか?
いや、それにしても――リビングに近づくにつれてその声は大きくなり、どうやら雄介と会話をしているように聞こえる。それは幻聴ではないのかもしれない。
誰もいるはずのないこの家で、実在しないはずの声が聞こえる。それを警戒しながら、望はリビングのドアを開けた。
リビングで最初に目が合ったのは、ソファに腰掛けていた雄介だった。雄介は望と視線を合わせると、静かに言った。
「おかえり……」
その言葉に、望も答える。
「ああ……」
そう返事をしたものの、リビング全体を見渡しても子供らしき姿は見当たらない。いるのは雄介だけだ。望は、さっきの子供の声は自分の疲れによる幻聴だったのだろうと思った。
だが、その直後――雄介の肩の辺りから小さな顔がひょっこりと現れた。その子供はじっと望を見上げていた。
望は目を見開き、言葉を失ったまま口をパクパクとさせていると、
ともだちにシェアしよう!