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ー天使ー2
「あ、ゴメンな……この子なぁ、暫くの間、預からなきゃいけなくなってもうたんや」
突然そんなことを言い出す雄介に、望は目をパチクリさせたまま理解が追いつかない様子だった。
雄介はそんな望の反応を気にした様子もなく、子供について話し始める。望としてはむしろ、「なぜこの子供が自分たちの家にいるのか」を聞きたいところだ。
「あんな……この子は俺の甥っ子で、名前は琉斗(りゅうと)」
「んー! ちょっと待て!」
雄介がさらに話を続けようとした瞬間、望が慌てて口を挟み、雄介を制止した。
「とりあえず、お前の『甥っ子』ってどういうことだ? 甥っ子ってことはさぁ、お前に兄弟がいるってことだろ?」
「あれ? 話したことなかったんやっけか? 俺には姉が居るってな……」
「……はい? 姉? そんなこと、俺はお前の口から聞いたことなんかねぇぞ。ってことは、雄介! お前は俺に隠し事をしていたってことになるのか?」
「あー、いやー、そこは、隠し事っていうまでにはならんような気がすんねんけどな?」
「いや、俺からしてみたら十分な隠し事になるんだけどな。だってな、お前に姉がいるなんて一回も聞いたことがないんだからな」
望は雄介を見上げながら、その隠し事について怒っている様子だった。
「あ、せやから、そういうつもりでも何でもなくてなぁ、ただ単に望に言う暇がなかったっていうのか……話題にもならなかったっていうんか?」
雄介は視線をそらしながら答える。どうやら、望に隠し事をしていたと怒られてしまったことに気まずさを感じているようだ。雄介としては別に隠しているつもりはなかったのだが、望にとっては隠し事と受け取られたらしい。
「ま、まー、とりあえずさ……この子の話だけでも聞いてくれへんか?」
雄介は両手を合わせ、望に向かって頭を下げた。
今まで怒っていた望だったが、その雄介の態度に怒りを通り越して呆れたのか、呆れたような表情を浮かべながら雄介の隣に腰を下ろした。
「……で、それで?」
雄介はそっと望の方を見ながら、彼の様子をうかがう。本当に望の機嫌を取るのは難しい。確かに機嫌がいいときに話していれば問題なかったのかもしれないが、今日は急なことで望の機嫌が若干悪いように思える。
「もう、俺のこと分かってんだろ? ならさ、今、俺がこういう体勢になってるんだから、話聞いてやるって言ってんだよ……」
「あ、あー! そういうことだったんか」
今まで申し訳なさそうにしていた雄介だったが、望の言葉を聞いてほっとしたように笑顔を見せた。その直後、望から突っ込みが入る。
「調子に乗るんじゃねぇぞ……。とりあえず、話を聞くだけだって言ってんだからな」
「話を聞くだけって、どういう意味やなんなぁ?」
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