1456 / 1471
ー天使ー5
「お、お前なぁ……質問が多すぎるだろ……」
望は困惑しながら頭を掻くと、琉斗の純粋な瞳を見てため息をついた。
「ま、まぁ……知り合ったのは仕事の関係っていうか……。あれだ、たまたまだよ、たまたま」
望の曖昧な返事に、琉斗は首を傾げる。
「たまたまってどういうこと?」
「そ、それはな……えっと……」
望は何とか誤魔化そうと口を開くが、うまく言葉が出てこない。そんな彼の様子を、キッチンから雄介がちらりと見てニヤリと笑った。
「おいおい、望、なんや大変そうやなぁ」
「雄介、助けろよ!」
「子供の質問ぐらい答えたれや。なんや、そんなに答えにくいんか?」
雄介は楽しそうに言いながら、エプロン姿で台所から顔を出す。
「お前なぁ……!」
望が雄介を睨む間に、琉斗は無邪気に手を叩いた。
「じゃあ、雄介おじちゃん教えて! どうやって望兄ちゃんと知り合ったの?」
「あー、それはなぁ……」
雄介が口を開こうとした瞬間、望が慌てて立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待て! 雄介、お前余計なこと言うなよ!」
望の焦った表情に、雄介は少し考える素振りを見せた後、にっこり笑って言った。
「分かった、分かった。ちゃんと簡単に言うわな」
望は少しほっとした表情を見せるが、雄介の口元には小さな笑みが浮かんでいる。
「おじちゃんとな、望兄ちゃんは、お互いの仕事の中で出会ってな。それで……お互い助け合う中で仲良くなったんや。な、そういうことや」
「ふーん……仲良しだから一緒に住んでるんだね!」
琉斗はその言葉に納得したように笑い、再び玩具の車を動かし始めた。
望は雄介に向かって小声で言う。
「……余計なこと言うなって言ったのに」
「なんや、嘘はついてへんやろ? まぁ、子供に細かいこと言うたかて理解できへんしな」
雄介は肩をすくめ、再びキッチンに戻ると鼻歌を歌いながら料理を作り始めた。望は疲れたようにソファに座り直し、琉斗が遊ぶ様子をぼんやりと眺めた。
「……これから、いろいろ大変そうだな」
望は小さくため息をつきながら、これからの日々を思い描いていた。
ともだちにシェアしよう!