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ー天使ー7
「ま、望が担当なら安心できるんだけど……一応な」
「まぁな。 でも、俺が担当で良かったな。 毎日のようにお前たちに伝えられるしさ」
「そんでも、一応は見舞いに行かなきゃならないんやけどな……琉斗もお母さんに会いたいだろうしなぁ」
「あ、まぁ……多分……」
「多分……って、どういう意味やねん?」
「だから、俺は小さい頃から親がいないのが当たり前だったからさ、親に会えないのって寂しいもんなのかなぁ? って思ってさ」
「そりゃ、寂しいに決まっとるやろ。 今はまだまだ親と一緒に居たいと思う時期なのに、琉斗と琉斗のお母さんは離れ離れなんやで。 今まで一緒に居たからこそ、寂しいや」
「そうなのか。 雄介って、本当に誰にでも優しいんだな。 人の気持ちになれる奴は本当に優しい奴なんだってさ」
「何? それは素直に取ってええんか?」
「ア、アホっ! 素直に取らなきゃどう取るんだよー」
そう顔を真っ赤にして言う望に対し、雄介はクスクスと笑っていた。
「な、なんだよ。 そこ、笑うとこじゃねぇだろうがぁ」
「あ、いや、今日の望はいやに素直やなぁーって思ってな」
その雄介の言葉に望はついに雄介から顔を反らしてしまう。
二人が大人な会話をしている間、琉斗は黙々とご飯を食べていたのだが、流石はまだ子供というところだろう。 雄介がフッと気づくと、琉斗の洋服はタレ等が溢れ汚れてしまっていた。
確かに今の年齢になれば、大人の介助も必要なしにご飯を食べることはできるのだが、大人のように上手く食べられるわけもない。
「あー、まったく、しゃーないなぁ。 琉斗、ご飯食べ終わったらすぐに風呂やからなぁ。 ほんで、もう遅いから寝るんやで……」
「分かった!」
そう、まだまだ無邪気な笑顔で答える琉斗。
「ええ返事やんな。 琉斗はやっぱお利口さんやなぁ」
そう言いながら、雄介は再び琉斗の頭を撫でるのだ。
その二人の様子を雄介の前で見ている望。
いつもなら二人だけの食事で、たまにああやって雄介が望の頭を撫でてくれるのだが、今日は琉斗の頭を撫でている。
きっと雄介は誰にでもああやって優しいのであろう。
「ごちそうさまでした」
そう琉斗は満面の笑顔で挨拶をすると、椅子から降り、自分が食べた食器を台所へと置きに向かう。
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