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ー天使ー8
いったい、どういう教育をしたら、ああいう風にお手伝いをしてくれるのであろうか。
「ほな、次は風呂な」
雄介もご飯を食べ終えたのであろう。 台所に食器を置きに行くと、琉斗の手を握りリビングを出て行く。
一人、リビングに残された望。
今日はいつもとは違い、寂しい気がするのは気のせいであろうか。
いつもなら、いやいやながらも望は雄介と一緒にお風呂に入っているのだが、今日は琉斗がいるがために、雄介からすると望の方は後回しなのかもしれない。
望はご飯を食べ終え、一息つくと、台所に食器を置きに行ったついでに洗い物を始める。
お風呂場からは二人の騒ぎ声が聞こえてきた。
その声だけで望は溜め息をつく。
このままでは今日はきっと雄介が琉斗のことを寝かしつけるまで、二人だけの時間は取れないだろう。
いつもなら雄介が休みの日は今頃、二人でイチャイチャしている時間だ。 だけど今日は琉斗がいる。 子供に嫉妬してはいけないと思いながらも、気持ちばかり今日は望が嫉妬しているのかもしれない。
「まさか……子供相手に俺が嫉妬するわけがないよな」
そう自分に言い聞かせるように、小さな声で独り言を呟く望。
望は食器を洗い終えると、二人がお風呂から出てくるまで、ソファに座りテレビを見ながら待っていた。
「出たでー」
そう雄介は言いながら、琉斗の頭を拭きながら出てくる。
その行為も、いつも雄介が望にしていることだ。
「ほな、とりあえず、琉斗寝かせてくるな……風呂でも入って、待っとって」
「ああ、分かった」
雄介は望の返事を最後まで聞かずに、どうやら琉斗と一緒に二階へと行ってしまったようだ。
きっと雄介からしてみたら、今の順位というのは完全に琉斗の方が上なのであろう。 いや、寧ろ子供なんだからできることの方が少ないのだから、子供の方が先なのは当たり前のことだ。
今日、望が帰宅してから、雄介に構ってもらえていないようにも思える。
望は気持ちばかり重い腰を上げ、お風呂場へと向かう。
雄介がいる時に一人でお風呂に入るのは久しぶりのことだ。
確かに一人でいる時にお風呂に入るのは慣れているのだが、雄介がいる時に雄介と一緒に入れないのはやはり寂しいのかもしれない。 そうだ、雄介がいる時というのはあーだこーだ言いながらも二人でお風呂に入っていることが多いのだから。
いつもは当たり前のことが、今日は当たり前ではない気がする。
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