1460 / 1471
ー天使ー9
望がお風呂から上がると、雄介は既にテレビの前にあるソファに腰掛け、テレビを見ていた。望がお風呂から上がって来たことに気づいたようで、雄介は望の方に顔を向け、
「やっと、二人だけになれたなぁ」
そう雄介は笑顔で望に向かい言うのだが、望は何故か怒っているようで、雄介の言葉を無視し、一人黙々と濡れた頭を拭いていた。
「な、なぁー、望ってー!」
そう雄介は望の名前を大きな声で呼ぶのだが、それでも望は無視している。
やっと雄介も望がいつも以上に不機嫌なことに気づいたようだ。
「やっぱり、アカンかったか? 琉斗をいきなり預かったこと……」
「……それは仕方ねぇって言っただろ」
いつもの望なら雄介の隣に腰を降ろすのだが、今日は雄介から左側にあるソファへと腰を降ろす。
「せやけど……」
雄介はその後を続けない。きっと、その後を続ければ望の地雷を踏んでしまいそうで、言葉に出来ないようだ。
「……ゴメン」
雄介はそれだけを言うと二階へと上がって行ってしまう。
雄介が二階へと行ってしまった後、望はソファに体を預け、溜め息を漏らしながらクッションを抱き締める。
そして次の朝、雄介が起きて来ると、望はクッションを抱き締めたままソファで寝ている姿を見かけることになる。
その望の姿に雄介は溜め息を漏らし、望へと近付き、
「望……望……」
そう優しい声で起こすと、望はゆっくりと目を開けた。
「ゆ、雄介……?」
「ん? 何?」
「あ、いや……なんでもない……」
始めは目を覚ましたばかりで、思わず望は雄介の名前を呼んでしまったのだが、それと同時に頭も覚めてきてしまったのだろう。どうやら昨日の出来事を思い出してしまったらしい。
「あ、そっか……」
雄介は望の性格をよく知っている。だから、それ以上は触れないようにしているようだ。
「とりあえず、着替えてきぃ……その間にご飯作っておくし」
「ああ……」
望は軽く返事をすると、着替えるために二階へと上がっていく。
すると、昨日、雄介と望の家に来た琉斗が一人で着替えをしている姿が目に入ってきた。
「琉斗君? 一人で着替えることが出来るのか?」
「出来るよ。 もう、僕は五歳だからね」
「あ、そっか……」
そう望は独り言を漏らす。
「よし! 出来た!」
そう琉斗は言うと、
ともだちにシェアしよう!