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ー天使ー92

「せやな……俺が悪かった。とりあえず、和也は知ってんねんやろ?」 「梅沢さんは毎日のように私の病室に来て下さってるからねぇ」 「ほな、知らんのは裕実だけやな。裕実は本宮裕実って言うてな、この病院で働いておるんやで……」 「本宮裕実って言います。よろしくお願いしますね、桜井美里さん」 「本宮さんね」  やっと雄介に紹介され、裕実が誰なのか分かり、美里は笑顔を浮かべた。  だが、美里は首を傾げながら言った。 「この病院にもう一人、『本宮さん』っていらっしゃなかった?」  雄介はその言葉に突っ込みたくなった。『裕実のことは知らんのに、本宮実琴の方は知っておるんか』と。しかし、姉貴に向かって突っ込める訳もなく、とりあえず心の中にしまい込んだ。 「多分、それは裕実の兄貴のことやな。裕実んとこは兄弟でこの病院で働いておるんしな」 「そうだったの? どうりで似てると思ったわぁ。二人共可愛い顔してるから、印象に残ってるのよね」 「姉貴なぁ、琉斗が居る前でそないなこと言うなやぁ」 「何言ってんのー、私が一番可愛いって思ってるのは琉斗よ」 「ん、まぁ……そやろうけどな」  どうやら、仲のいい兄弟と言っても、雄介は美里の前ではたじたじらしい。 「あ、それとな姉貴……」  雄介は今まで話せていなかったことを美里に話そうとしているようで、急に改まった表情で美里を見た。 「俺……レスキュー隊辞めるかもしれないわぁ」 「貴方がレスキューを辞めるって、どういう事?」  その言葉に、さすがの美里も目を丸くした。 「話をすると長くなんねんけど……望がな、親父である院長に言われたんやって……後、五年後くらいに春坂病院系列の病院だか診療所を作るらしいんや……ほんで、その診療所の院長は望になるんやって。望は仲間だけでその診療所をやっていきたいらしんやけど、医者が二人と看護師が二人で、看護師はここの二人でええねんけど……後一人医者が居らんっちゅう訳で、俺が頼まれとるんや……せやから、レスキューを辞めて、俺は医者になろうと思ってんやけど?」

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