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ー天使ー93
雄介は自信なさげに、最後は疑問系で美里に投げかける。
一方、美里はその雄介の言葉に難しい顔をしていた。そして、静かに口を開く。
「雄ちゃんがそれでいいって言うなら、私は何も言わないわよ。だけど、雄ちゃんの能力で大丈夫なの? 後は学費とかは?」
「んー、望が言うには、能力は大丈夫みたいなこと言っておったで。一応、今日、望にテストされんねんけど、後は学費の方はな」
雄介は流石にそこまで美里に突っ込まれるとは思っていなかったのだろう。言葉を詰まらせてしまった。
だって、そうである。学費のことに関しては、望のお父さんである裕二が出してくれると聞いているのだから、美里に正直に言いづらかった。
「雄ちゃん! 学費の方は!? 普通は『自分で出す』って言うくらいじゃないと、医者になるっていう本気さが伝わらないんだけど……」
流石は女一人で男の子を育てているだけのことはある。それとも、美里の性格なのだろうか。あるいは、昔から美里が雄介に厳しいのかもしれない。いずれにしても、彼女は容赦なく雄介に厳しい突っ込みを繰り返す。
「せやから……それはやな? 確かに最初は自分で出すって言うたんやで。せやけど、望が『学費のことは親父に頼んでやる』って言うたから、その学費はな……望の親父さんが……」
「出してくれるって訳ね……」
美里は一つ溜め息を吐くと、ぽつりと呟いた。
「ホント、二人してこの病院に迷惑掛けっぱなしじゃない」
そう漏らしながらも、雄介に顔を向けて言う。
「雄ちゃんが本気で医者を目指したいんなら、逆に頑張りなさい! だけど、院長や吉良先生に迷惑を掛けないように、しっかり学校に行って、しっかり勉強するのよ。それから、お医者さんになれたら、ちゃんと働いて恩返ししてあげてね。一度決めたことは、最後までやり遂げる。それが雄ちゃんなんだから」
美里は言葉を続ける。
「確かに、お父さんの言う通りに雄ちゃんは消防士になった。それは、小さい頃からお父さんに言われ続けて、消防士になった訳だけど、雄ちゃんはそれなりに努力していた。もしかしたら、雄ちゃんが本当にやりたかった職業かもしれないけど、本心は本人じゃないと分からないからね。でも、今はもう消防士を通り越して、レスキュー隊員の一員になれたわけで……」
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