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ー決心ー2
「お前なぁ、和也が探してもうたら、俺の楽しみがなくなるやんかぁ」
そう雄介は呆れたように溜め息を漏らす。
「そう言うけどなぁ、お前がちんたら探してんのが悪いんだろうがー。だから、俺はお手伝いしてあげただけなんですけどー」
悪びれることなく言う和也。そんな和也に、雄介は溜め息を吐きつつも、
「あ、もう、ええわぁ。合格したの分かったしな」
呆れたようにそう言う雄介に、和也は口をとがらせながら言うのだ。
「……って、医学部に合格したってぇのに、あまり嬉しそうじゃないよなぁ」
「アホか……もう三十歳になりそうな大人が、合格ぐらいでバカ騒ぎなんかせんわぁ」
「……って、そんなこと雄ちゃんは言ってるけど……内心じゃ嬉しいんだからねぇ」
美里の一言に、雄介は珍しく顔を真っ赤に染めた。それを隠そうとしたのか、和也たちから視線を外し、青い空を見上げる。
きっと雄介は密かに心の中で、医学部に合格できたことを喜んでいるのだろう。その証拠に、さっきまで赤かった顔が、大空を見上げた瞬間には笑みへと変わっていた。
「じゃあ、雄介の入学手続きが済んだら、次は雄介の合格祝いな!」
和也のその言葉に、雄介は目を丸くしながらもう一度和也たちの方へと体を向ける。
「和也……今の言葉、どういうことやねんって……?」
「そりゃ、当たり前っしょ。学校に合格したんだから、祝うのは普通だろ?」
「あ、うん……まぁ、そうやねんけどな。なんつぅんかな? 普通は親とかとやらへんか?」
「別にいいじゃねぇか……お前の親は大阪なんだし、友達である俺たちが祝っちゃダメってことはねぇだろ?」
「あ、まぁ、そうねんけどな」
「だから、俺たちが祝ってやろうってわけだしさ。ま、親じゃねぇけど……お前の親族で祝ってくれる人がいるじゃねぇか」
「ホント、本当……。雄ちゃんが不合格だったら、慰めてあげようと思って来たのにねぇ」
嘘泣きなのか本当に泣いているのか分からないが、美里は顔を俯かせ、目にハンカチを当てていた。
「ちょ、ちょー、姉貴ー、そんくらいで泣くなやぁ。それに、なんやねん『不合格やった時に慰める』って……俺、そんなに心弱ぁないで。それに合格できへんかった時には、すぐに諦める気持ちでおったしな。合格できんかったってことは、俺はその仕事には向いてないって思うてたから……そこで諦める気持ちやったしなぁ。だって、その職業に向いておるかどうかは、お偉いさんが決めてくれるんやろうし」
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