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ー決心ー50
「まぁ、確かにそうなるな。とりあえず、まずは警備員に怪しまれないように事情を伝えるしかない。俺たちは兄弟って設定にしておこうぜ。聞かれた時に答えればいいだけだしな」
「ああ、分かった」
望が返事をした直後、駐車場に和也の青いスポーツカーが入ってきた。
車から降りた和也は、今まで通話していた携帯を切る。
「お前なぁ、今は電話しながらの運転は道交法違反だろうが……」
「ま、いいから、いいから。一応、警察にはバレなかったし、セーフだろ?」
その和也の言葉に、望は呆れたように溜息を漏らす。
「とりあえずな、この病院への入口はこっちや。さっき俺たちは右の方に行ってまったから遠回りになったけど、左から行くとこの病院の横に入口があるみたいやで……」
「じゃ、とりあえず入るか……」
三人は病院の緊急用入口に向かう。入口の前で無言で目を合わせ、アイコンタクトを取って中に入った。
すると予想通り、入口のすぐ右手にがっしりとした体格の警備員が座り、監視していた。
和也は作戦通りに声を掛ける。
「すみません。俺たちの親がこの病院に入院してまして、病院から『今日が山かもしれない』と連絡を受けて来たんです。病棟の方に入らせていただけますか?」
「分かりました。そこにある階段から病棟に向かえますので、どうぞ」
警備員は営業スマイルを浮かべて案内した。
無事に病院内に入ることができた三人。古びた病院ではあるが、内部は広い。一階ロビーに掲示されている地図を見ると、この病院は五階建てで、上から見ると「口」の形をしているようだ。中央には中庭もある。
三人は階段を上りながら相談を始めた。
「どっから探す?」
「やっぱ、これだけ広い病院やと二手に分かれた方が早そうやな」
三人はそれに納得し、和也は単独行動を、望と雄介はコンビを組んで病院内を探すことにした。
夜の病院は静まり返っている。そんな中、望と雄介は当直の看護師に出会った。
「今の時間にどうしました?」
看護師の問いかけに、望と雄介は一瞬顔を見合わせたが、雄介がすぐに答えた。
「あ、ああ……まぁ、親がな……急に入院したとかで、さっき先生から『今日が山や』って電話があって来たんやけど……その、外科病棟ってどこになりますかね?」
少し困ったような、焦ったような表情で看護師に尋ねる雄介。
「そちらになりますよ」
看護師は「外科病棟」と書かれた看板を指差した。
「あ、ありがとうございます……」
雄介は軽く頭を下げると、望と共に外科病棟の方向へ向かう。しかし、看護師から少し離れると、雄介は急に望の手首を掴み、駆け出した。
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