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ー平和ー19
「あ、いや……ただ……お前の顔をまともに見るのが久しぶりだったからさ。ただ、言葉を詰まらせちまっただけで……」
「なんや、そないなことやったんかいな。ホンマ、俺も望と久しぶりに会話できて嬉しいわぁ」
雄介は笑顔を浮かべると、望の体をそっと抱き締める。
久しぶりに恋人に抱きしめられた望は、どうしたらいいのか分からないのか、雄介の胸の中でそわそわしながら言った。
「な、雄介……? 勉強の方ははかどってるのか?」
恋人気分を壊すような話題に変えてしまう望。
「勉強なぁ……」
雄介はそんな望の様子に気付くこともなく、抱きしめる腕を解いて少し離れると、
「ま、まぁ、とりあえずは大丈夫やで。勉強の方はどうにかついていけてるしな。せやけど、望たちに負けないように、今は予習復習を毎日してるとこやし、たまにはレポートも書かなアカン状態や。まぁ、和也に言われたわ。『週に一日だけでええから、休みの日を作れ』ってな。せやから、これからは週一日は望とゆっくり過ごす日を作るつもりや。後は自分の気分転換やな」
「なるほどなぁ。俺も和也にそう言われたよ。確かに今は毎日が忙しいけど、やっぱ和也の言う通りだよな。週一日はゆっくり休んで気分を入れ替えて、それでまた忙しい毎日を過ごす方がいいのかもしれねぇ。それに、倒れちまったら元も子もないしな」
「せやな。和也ってホンマすごいわぁ。もっと早く相談すればよかったって思うわ。和也のおかげで久しぶりに望とこうやって会話できたしな。多分やけど、俺……半分、鬱気味やったかもしれへん。いつもの自分を見失いかけてたし」
「そうだったのか。それで、お前に話しかけられなかったのかな。なんつーか、前まではあんなにイキイキしてたのに、さっきまでは暗い感じがしてたっていうか」
「まぁ……そうかもしれへんなぁ。でも、まぁ、和也のおかげで今は自分を取り戻せたし、大丈夫やで」
雄介は笑顔を望へ向ける。
「そうみたいだな」
そんな雄介に、望も自然と笑顔を向け返した。
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