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ー平和ー30
「まぁ、そうらしいけど……。多分だけど、昔は父さんも母さんも仕事してて、ほとんど家にいなくてさ。俺は婆ちゃんにくっついてたんじゃねぇかな?父さんたちについて行っても構ってもらえないって思ったから、俺なりに日本に残りたいって言ったんじゃねぇかな。もう、父さんと母さんがいないのが当たり前だって思ってたのかもしれねぇしな」
「そうかもしれねぇな。望は今になって家族と再会できたってわけだ」
「ま、父さんには随分前に会ったけど、歩夢とは前に会ったしな。でも、母さんとはまだ会ってねぇんだよなぁ。しばらく会ってないから悪いけど、もう母さんの顔覚えてねぇんだよな」
「望はお母さんに会いたいって気持ちはねぇの?」
「別に……今は特に会いたいって気持ちはねぇんだよな。大人になっちまったし、会える時に会えればいいかなーってくらいでな。そういう和也こそ、お母さんに会いたいって思わねぇの?」
「俺も望と一緒だな。母さんには会いたい時に会えればいいかな? ってくらいだな。別にマザコンじゃねぇし、同じ空の下で生きてりゃいいかなーって感じ……」
「だろ? 俺もそんなに母さんには思い出ねぇしな」
「そういうことだよ」
望たちは部屋に戻ると午後からの仕事の準備をし、仕事へと向かった。
午後の仕事を終えた後、二人は部屋へ戻ってきた。
望はパソコンに向かい、残っている仕事を片付け始める。
一方、和也は部屋の掃除をしている。そんな中、部屋をノックする音が響いた。
今日は朔望と約束をしていたのだから、訪問者が朔望だということは望にも分かっている。
望はドアへ向かい、それを開けた。
やはり、約束していた通りの人物だった。
改めて見ると、容姿は本当に望にそっくりで、身長もほとんど変わらない。
二人の違いといえば、望は眼鏡を掛けているのに対し、朔望は掛けていないことくらいだ。
「とりあえず、中で待っててくれよ。俺はまだ仕事が終わってねぇからさ」
「じゃあ、僕はソファで待たせてもらうよ」
そうして朔望は、望の仕事が終わるまでソファで静かに待っていた。
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