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ー平和ー83

「そうだな」  和也はそう一言だけ言うと、いきなり車を走らせる。 「どないしてん!? いきなり、犯人のとこに行く気なんか!?」 「違う! 違う! ちょっと確認したいことがあるんだよ。それを見て、今考えた作戦で行けそうなら、それで行くつもり」  和也は仲良し公園から車を走らせ、朔望からのメールに書かれていた名前の家の前まで来て一瞬車を止めた。そして裕実たちがいるであろう家の方へと視線を向ける。  その時、窓際に立っていた裕実と朔望の姿を確認する。 「なるほどな……」  和也はそう独り言を漏らすと、再び車を走らせ、一旦ぐるりと回ってから先ほどの仲良し公園の前に車を止めた。 「とりあえず、玄関の上に裕実たちがいる部屋があって、その玄関のすぐ横に大きな窓がある。リビングがそこみたいなんだよな……。裕実たちを助けるには、その玄関の上にある窓から、玄関の屋根に降りてもらって……そっから飛び降りてもらうしかねぇみてぇだけど……。そこからだとリスクを伴う恐れがあるんだよなぁ。リビングは真横だから、玄関が視界に入るしさぁ」 「それを確認しに、和也は一旦、犯人の家を見た訳や」 「ま、そういうこと……。家の外見を見ておかないと、どうあいつらを脱出させるか分からねぇしな。でも、靴も履かないで二階から飛び降りるって、結構足に負担がかかるだろうな?」 「そこも問題な所なんかぁ。ほんなら、俺が下で支えてやってもええで……」 「確かに、雄介の方が俺より力がありそうだし、そこは雄介に頼んだ方がいいのかもな。ま、それはいいとして、後はあのリビングにある大きな窓から見つからずに脱出するってのが問題だよな。だから、犯人たちは裕実たちを縛らなかった訳だー。例えば、裕実たちが窓から逃げようとすれば、容易に目に入る訳だしさ」 「ホンマ、厄介やわぁ、あの窓……」  溜め息を吐く。  ここまで来たのに、裕実たちを助ける手段が断たれてしまっているのだから。  助けに来たはずなのに、雄介たちが犯人たちに捕まってしまえば助けに来た意味もなくなってしまう。  だが、今のところ助ける手段は無いというところだ。

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