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ー平和ー107

 望は先にお風呂に入り、二人でお風呂に入るのだから、お湯を溜めながら湯船に浸かっていた。  病院でもお風呂には入っていたのだが、やはり沢山の人が入るお風呂の為、一人の時間が限られている。 その為、ゆっくり入れなかったせいか、久しぶりに湯船に浸かりたかったのもある。  望は湯船に浸かり、ゆっくりと天井を見上げていると、お風呂場と脱衣所の間にあるすりガラスのドアの向こうに人影が見え、雄介が来たことが分かるのだ。  望が先にお風呂に入って雄介のことを待つのは初めてで、少し違和感があるのだが、後から入るよりは先に入っていた方が気楽なことに気付く。  そしてドアが開き、雄介がお風呂場へと入って来た。  久しぶりに見るお互いの身体。  服の上からでも雄介は未だにいい体付きしていたが、服を脱ぐと更に筋肉質でいい体付きの雄介。  久しぶりに見てしまった恋人の体に、望は見ていられなくなったのか顔を俯かせてしまう。  雄介はまずシャワーで体を洗い、それから望が浸かっている湯船へと入って来た。  向かい合わせに座る二人。  しかも、お互いに久しぶりの生まれたままの姿に顔を合わせられないでいた。  雄介もそんな望に気付いているのか、上手く話すきっかけが出来ないというのか、望のことを想って何も言わないのか、二人の間には沈黙が流れるのだ。 「な、望……」  この状況に言葉が出ない望だったのだが、雄介の方が口を開く。 「向かい合わせやと恥ずかしいねんやろ? ほなら、望が向こう向いて……そしたら、望は俺んこと見ないで済む訳やし」  その提案に望は素直に従い、雄介とは反対側を向く。  そして雄介は優しい声で、 「望のこと抱きしめてええ?」  その言葉に望はゆっくりと頭を頷かせる。  雄介は望から承諾を得ると、望の背後から体を抱きしめるのだ。  久しぶりの恋人の温もりに、どうしたらいいのか分からない望。  でも、そんな望の性格を知っている雄介は黙ったまま望の体を抱きしめているだけである。

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