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ー平和ー109
「幸せ……か……」
そう望はしみじみと『幸せ』という言葉を発する。
「幸せって、こういうことなんだな。 なんか俺……今まで幸せってことを感じたことがなかったから、頭の中に『幸せ』って言葉はなかったけどさ、雄介のおかげで、幸せってことが分かったような気がするよ。 『幸せ』な気持ちって、言葉とか体で表現するのは難しいことだよな……そこは気持ちっていうのか、自分が幸せだって事が幸せって事なんだもんな」
「せやね……。 確かに望の言う通りやと思うわぁ。 何か幸せって感じは言葉や体では表せないような気がするしな」
「雄介……ありがとうな……俺にそんな幸せな思いを教えてくれて」
「そない大したことじゃあないよ。 幸せってのは自分で感じるものやってさっき自分で言うてたばかりと違うの? せやから、俺のおかげやないって、そこは望自身が見つける事が出来たって訳やしな」
「でも、お前に出会うことが出来なかったら、俺は幸せってことを一生知らないままでいたのかもしれないぜ。 幸せって一人では作れないんじゃねぇのか? 複数人以上で分かち合うもんだと思うんだけどなぁ」
「あー! 確かに! そうなんかもしれへんな……俺も望に会わなかったりしたら、幸せって気持ちにはならなかったやろうしなぁ」
「だろ? だから、幸せって一人で楽しむもんじゃねぇんだと思うぜ……きっと、二人以上で分かち合うもんなんじゃねぇのかな?」
「そうやね……二人以上でわかち合う感情なのかもしれへんな」
雄介は望の体を更に抱き締める。
暫くの間、のんびりとした時を刻む二人。
「お風呂にのんびり浸かっておるのもええねんけど……そろそろ出ぇへんと、今度はのぼせてまうしな」
「あ、ああ、そうだな……」
いきなり雄介の現実味のある言葉に慌てた様子で返事をする望。
望は先に立ち上がると、浴槽から出て脱衣所へと向かう。雄介もその後を追うようにお風呂から上がり、二人はタオルで水気を拭くと、再びリビングへと向かうのであった。
雄介は冷蔵庫に冷やしておいたビールを出してくると一本は望へと渡し、もう一本は蓋を開け、
「ほなら、今日は望の退院祝いに乾杯!」
と言いながら缶ビールを天井へと掲げる。
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