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ー希望ー3
午前中の仕事は診察を済ませ、お昼になると三人は食堂に向かおうとしていたのだが、望は腕の中に色々と書類らしき物を持っていた。
「望、それはなんだ? いつもお昼の時に書類とか持ち歩いてないだろ?」
「ああ、これか? これは、雄介へのお仕事。色々やることがあり過ぎて、時間がないから、昼食いながら雄介に渡そうと思ったんだよ」
「相変わらず、仕事では真面目だなぁ、望はさ……」
和也は独り言のように言ったためか、どうやら雄介達には聞こえてなかったようだ。
「とりあえず、これは俺が今、担当している患者さんのカルテだからよ。昼休みに見ておいてくれよ。んで、それを覚えてくれよ」
望は腕に持っていたカルテを雄介へと渡すのだ。
「あ、ああ……おう」
三人は食堂に着くと、雄介は望に貰ったカルテを見始め、望はどうやら自分の仕事を始めたようだ。だが和也はやることがないのか、ただ二人が仕事をしている姿を見ながらご飯を食べるしかないようだ。
すると雄介は、今まで捲っていたカルテの紙を止める。
「……坂本淳? どっかで見たことがある名前のような気がすんねんけどな?」
「その人は確か、今日、小さな医院から紹介があって、咳が酷い風邪だと思ったんだけど、いつまでも治らないからって、とりあえずはウチの病院に検査入院ってことになってるんだけどな……」
「って、望ー、そないな事を聞いておるんやないんやけどなぁ?」
雄介のそんな言い方に、望は険しい表情をすると、
「至って、俺は普通のことを言ったまでだぞ。それを、そんな風に言うもんじゃねぇだろ?」
そう静かに説教っぽく言う望。
「それで? その坂本淳さんって?」
「あ、スマン……!」
と雄介は手と手を合わせて望に向かい謝るのだが、再び望はムッと顔をし、
「な、雄介……ここは仕事場だぞ。もうちょっと言葉使いとか気にしねぇか? ま、俺に対して先輩までは付けなくてもいいけどさ……せめて、先生とかつけろよ。タメ語とかも控えろ。俺も気を付けるようにするからよ」
その望の言葉に、雄介は和也を呼び寄せ、
「望は本当に仕事には真面目なんやな。こないな望、今まで見たことないしー、説教もされたこともなかったしな」
「仕事というか、望は元から真面目な性格だろ? 特に仕事場では望の方が雄介より上司の立場になる訳だから、間違ってることは間違っているって言うタイプだとは思うぜ」
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