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ー希望ー9
雄介は優しい瞳をしながらも、瞳の奥では望のことを心配しているようだ。
「ただの睡眠不足だって言ってんだろ! それからのめまいだから、心配する必要はねぇんだぁらな!」
望は強く雄介に言い切ると、今まで食べていた食器類を持ち、先に歩き始める。
そんな望に、雄介はその場で大きな溜め息を漏らすのだ。
そう、望の性格というのはそういうもんだからだ。 心配すればする程、こう反発してきてしまう。 そんなことは分かってはいるものの、そこはもう人として心配してしまう所だろう。
そこへ和也が雄介のところへと来ると、
「望はああいう奴だから、心配する必要はないと思うぜ。 心配すると、余計に望は怒っちまうしさ」
「ま、確かに、そこは知ってんねんけどな。 とりあえず、今は恋人としての心配なんやって……。 確かに今の望は毎晩のように何かしておって、目が充血していたのは知っておったんやけどな……望の言う通り、ただの睡眠不足ならええけどー、もし、貧血や他の病気やったらと思うとやっぱりそこは心配なんねんやろ? それに貧血だって言うても馬鹿には出来んしな。 恋人としても心配やけど、今は医者としても心配っていう所やな……」
雄介の言葉に和也は鼻で笑うと、雄介の背中を叩き、
「望にはさっき雄介は医者として自覚は無いとは言われていたけどさ、俺からしてみたら、お前はもう立派な医者なような気がするよ。 まさか、雄介の口から病気って言葉が出てくるとは思ってなかったからさ」
「え? あ……そうなんか?」
雄介は顔を和也の方へと向けると微笑み、和也の方もそんな雄介に微笑み返すのだ。
そして和也はその雄介の言葉を褒めているらしいのだが、雄介からしてみたらどう対応したらいいのか分からないようで、雄介は腕を組み、首を傾げてしまっている。
「でも、確かに望は今、倒れそうになったんだから心配だよなぁ。 ま、望に言っても検査してくれなさそうだしよ。 雄介から説得してみたらどうだ? 検査してみて、今の雄介なら病気か睡眠不足だったか判断出来るだろ? ほら、今後の練習のために実験的に望のことを診たいとか言ってさぁ」
和也の意見に雄介は手を叩くと、
「それや、それ! 確かにそれなら、望でも検査協力してくれるやろうしなぁ」
「そういうこと! 本人が睡眠不足だって言っていても実際は分からねぇもんだしさ」
「せやな! 半分以上忘れておったわぁ、今の自分は望のことを診てあげられる立場やったってことをな……」
「おいおい……そのセリフだと、さっきの『雄介は医者という自覚がある』って言葉を前言撤回するぞー」
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