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ー希望ー10
雄介は望のことを追いかけるように少し小走りで部屋へと向かうのだ。 そして先に行ってしまった望は部屋へと戻ると、椅子に座りパソコンへと視線を向けていた。
雄介は部屋に入ると、望のことを見つけ、側へと向かい、望の視線へとしゃがみ込むと、
「さっき、望は倒れかけたやろ? せやから、一度、検査してくれへんかな? って思ったんやけど……」
「大丈夫だからいい……」
「望のことだからそう言うと思ったわぁ」
雄介は一息吐き、立ち上がると、
「なら、俺のために検査受けてくれへんか? それだったらええねんやろ?」
「雄介のために? って、どういう意味だ? ただ雄介が心配だからとかだったら、やらないからな」
「そうやなくて……望、忘れてへんか? 俺はまだ医者になったばっかりで経験不足なんやで、医者って経験を積んでナンボのもんやろ? ほんなら、俺の経験のためにも協力してくれへんかなぁ? って思ったんやんやけどな。 CTとかで異常が見られなければ、俺自身も安心できるし」
雄介の言葉に、望は少し納得したのか、小さな声で、
「分かった……」
と納得してくれたように思える。
確かに和也のアドバイス通りだったのかもしれない。 そう、望の場合には仕事関連でだったらきっと承諾してくれるだろうと睨んでいたのだから。
「それなら良かったわぁ。 ほなら、後で下に連絡しとくな」
「ああ。 とりあえず、今回はお前のために協力するだけだからな」
「分かっとるよ」
雄介は望に向かい微笑むと、
「ほな、とりあえず、CTと血液検査だけよろしくな」
「ああ、分かったよ」
雄介は望の言葉に安心したのか、望の横に座り、さっき望に渡されたカルテを見始める。
部屋内には暫くの間、パソコンのキーボードの音と紙を捲る音が響くのだ。
雄介はいきなり顔を上げると、
「和也の奴、遅くないか?」
「和也は坂本さんの検査に付き合ってくれって言っただろ?」
「あ、そうか……。 そいじゃあ、俺たちは何で食堂から早く戻ってきたん? 今日は午後からは俺たちは診察が無い日だったやろ?」
「あそこじゃ、うるさくて色々やるのに集中できないからな……それに俺たち、騒ぎ過ぎただろうが……だから、居心地が悪くなったような気がしたんだよ。 だから、部屋に戻ってきたって訳……」
「そういうことやったんか……。 って、望。 今暇やって言うんやったら、検査に行ってきてー」
雄介は望の方に視線を向けたのだが、望は今の雄介の言葉を聞いていたのか、聞いていなかったのか、首を縦にも横にも振ろうとしないようだ。
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