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ー希望ー11
「今の俺の言葉、聞いておったか?」
「……へ? 何か言ってたのか?」
「何かに集中しとるのはええねんけど、俺の話も聞いて欲しいねんけどなぁ。あのなぁ、せやから、今、時間が空いておるなら検査して来て欲しいって言ってんねんけど」
「俺は忙しいし、今はまだ外来が忙しいだろうから、ただの睡眠不足の為にCTとか使うのはもったいないだろ? 他の患者さんの方が急を要する場合だったらどうするんだよ」
「そうかもしれへんけど、望やって急を要するかもしれへんのやで! ほら、前に記憶喪失になったこともある訳やし。俺が下に電話して予約するからさ」
雄介はそう言いながら望の首に掛かっている院内専用のPHSを取ろうとしたのだが、望は雄介の手首を掴み、
「だから、今はいいって言ってんだろ!」
そう望は本気で嫌がっているのか、強い言葉で返すのだ。
「何で、そんな風に検査を拒んねんって! こっちは本気で心配してんねんで!」
「だから、さっきっから、俺は言ってんだろ! 俺の場合はただの睡眠不足なんだから、検査する必要は無いって! それで、その為だけに時間も取られるのも嫌だし、他の患者さんにも迷惑掛かるからな!」
雄介は望のその言葉に、もうこのままでは話が平行線なような気がして、溜め息を一つ吐くと諦めたかのように椅子へと座るのだ。
そこへ和也が坂本の検査を終え、部屋へと戻って来る。
だが二人の間で何かあったという雰囲気に気付き、雄介と望の顔を交互に見た後に、
「とりあえず、雄介……さっき食堂で言っていた坂本淳さんはお前の知り合いだったよ」
そう先に和也は雄介に告げるのだ。
「……へ? そうやったんか? ほんなら、今度、坂本んとこに行く機会があったら話してくるわぁ」
「そうだな……まぁ、回診がある時にでも顔見ればいいんじゃねぇか? それと、とりあえず坂本さんは雄介の知り合いだっていうのが分かった訳だし、まずは雄介が坂本さんを診て上げるっていうのはどうだ? まぁ、望が先に検査してくれれば望の方を先に診てもらってもいいんだけどさ」
既に和也は部屋に入って来た時点で何かに気付いていたのであろう。いや、寧ろ和也が帰って来る前まで望の検査の話で二人は言い合っていたのだから、和也はその雰囲気に気付いていたのかもしれない。和也はそういうところではよく勘が働くのだから。
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