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ー希望ー13
雄介は和也の言葉に目をパチクリさせていると、
「ほんなら、和也が持っているPHS貸して! 今日は俺は初日やろ? せやから、まだそれ持たせて貰ってないし、それでさっき望のでCTの予約入れようとしたのに望が貸してくれへんかったんやからな」
「今はみんなPHS持ち歩いているからしな……部屋には電話が無いし。まぁ、そういうことなら、俺は構わないけどな」
和也は雄介にPHSを渡すと、雄介は望の為に電話をかけ、勝ち誇ったような笑顔になる。きっと心の中ではガッツポーズをしているのかもしれない。そして今度は和也の方に視線を向け、
「ばっちり大丈夫や! 今はCT空いておるって言っておったしな」
「なら、後は雄介が望を説得しろよ。検査には俺が連れて行くさ」
直ぐに雄介は行動を起こし、望の近くへと向かい肩に手を乗せて話し始める。そんな二人の様子を和也は腕を組んで見ていた。
「望、今すぐにCT行って来てー。今、電話したらCT空いておるんやってって言っておったしな」
そう笑顔で軽くふざけたように言う雄介に、望は顔を上げずにパソコン画面へと視線を向けてしまっている。
「……望? 聞いてるん?」
だが望の方はその雄介の言葉を無視し、ただ一瞬チラリと雄介の事を見上げるものの、直ぐに溜息を漏らしてしまう。
「な、なぁー、望ー。今、CT空いてるし、和也と一緒でええから行って来て欲しいんやけどなぁ」
望は再び溜め息を吐くと、
「お前は本当に仕事やる気あんのか? それと、患者さんに対してもそんな口調で言うのか? そんなんじゃ、誰も検査とか受ける気にならないからな! さっきも注意した筈だぞ! 確かに俺達はプライベートでは恋人同士だし、知り合いだけど、仕事場では指導医と新人って立場だ! そこをきちんとわきまえてもらわないと困る! それが出来ないのなら、桜井先生を新城先生に任せるからな! だから、不純な動機で医者なんかやるな! って前から言ってただろうが……。それに、医者としてやる気がないのなら、今直ぐに辞めてもらってもいいんだぜ!」
今日は何度、雄介は望に注意されただろうか。そこは分からないのだが、かなり注意されたと思われる。
本当に仕事をしている時の望は厳しいのかもしれない。
雄介はやっと望の言葉で目覚めたのであろうか。両頬を両手で軽く叩くと、急に気合いを入れ、
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