1867 / 2058

ー希望ー14

「スイマセンでした」  何を思ったのか、雄介は望に向かい頭を下げる。きっと望が言いたい事が分かったのであろう。  そしてもう一度、望に向かい頭を下げる雄介。 「お願いなので、今は恋人とか知り合いとか関係なく、検査を受けてもらえないでしょうか?」  望はその雄介の言葉に仕方なさそうではあったのだが、溜め息を吐くと、椅子から立ち上がり白衣を椅子の背もたれに引っ掛け、今度は和也に向かい、 「和也……行くよ」  と言うのだ。  その望の言葉に和也は笑顔になると、先に行こうとしている望の後を追いながら雄介の方へと顔を向けウィンクをすると、二人は部屋を出て行こうとした直後、雄介の方に顔を向け、 「とりあえず、俺達がいない間、さっき検査を終えた坂本さんのレントゲンとか見ておけよ……で、どんな様子なのか見ておけ。後で俺が帰って来たら、俺も見るけどさ。まぁ…それがお前の最初の仕事って事かな?」 「ああ……」  そう雄介は何かを言いかけたのだが、さっき望に言われたことを思い出したのか、大きな声で、 「はい!」  と返すのだ。  そんな雄介に望も笑顔を向け、和也と一緒に検査へと向かう。  暫くして望と和也が部屋へと戻って来ると、望は雄介の前にそっと今まで検査してきた物を置くのだ。 「俺はまだ自分の検査してきた物は見てないから、後はお前が見て診断してみろ」 「はい」  雄介はそう返事をすると、ファイルに入っている物を出し、じっくりと見るのだが、やはり望の言う通り異常は無さそうだ。  それに安心した雄介は胸を撫で下ろすと、望にそれを渡し、 「俺が見たところでは異常がないように見えんねんけどな……」  望も確かめるように見てみるが、どうやら雄介の診断は間違っていないようだ。望からしてみても異常は見受けられなかったのだから。 「だから、大丈夫だって言っただろ? 本当に無駄な時間を過ごしたような気がするよ。とりあえず、悪いけど……さっき倒れかけたのはただの睡眠不足だからさ」  望はそう言いながら、今まで検査してきた物を机にある本棚の本と本の間に挟み込む。 「それで、坂本さんの方は何か分かったのか?」  雄介は望のその質問に首を振ると、望に坂本のレントゲン写真を見せるのだ。

ともだちにシェアしよう!