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ー希望ー16

「今日の夕飯どないする?」  仕事を終えて、雄介は緊張もほぐれ、いつもの雄介に戻ると、雄介らしい言葉を発する。 「そうだな?」  望も仕事とプライベートをきちんと分けるためか、雄介との会話に賛同し、 「ま、何でもいいけどな……お前が好きなもんでいいよ」  その望の言葉に、雄介は首を捻らせると、 「その言い方やと、外食でもええってとってもええか?」 「外食か……お前は外食したいのか?」 「そういう訳じゃあらへんけどな。望の言葉的にそうもとれるかなぁ? とも思っただけや」 「そういうことか。俺は別にどっちでも構わねぇよ……本当にお前が好きなもんでいいからさ……」  雄介はもう一度、首を傾げると、 「なぁ……勘ぐってたらスマンな。もしかして、望……俺のこと試してないんか?」 「……試すって?」 「あー、せやから、俺の優柔不断な性格を直すために、俺に決断させようとしてくれへんのかなぁ? って思うただけなんやけど……」 「ふーん……お前がそう思うならそうなんじゃねぇの?」  望は雄介のことを試しているのかは分からないのだが、顔色一つ変えずに運転を続けている。 「って、どっちやねんって……」 「どっちでもいいだろ? お前がどちらかに決めろって、俺は言ってんの」 「あ、せやったな……そういうことやねんな」  雄介は椅子へと寄りかかり、腕を組みながらどうやら考えているようだ。  そんな雄介に気づいた望は、 「そんな考えている余裕なんてねぇぞ。もうすぐ、家に向かう方面の信号に当たるからな。外食すんだったら、右に曲がらなきゃなんねぇんだけど……」  その望の言葉に、雄介は体を前へと乗り出し、 「ホンマやんか! ほんなら、外食にしよ!」  雄介はそう慌てたように言うのだ。 「分かった……今日は外食な。外食はいいけどよ、どこに行くつもりなんだ?」 「ほんなら、焼き肉屋さんでええんやんか」 「ま、たまにはそれもいいか」  今日の望は、雄介が外食だと言ったのにも関わらず、何も文句を言わずに雄介の言葉に従い外食にしてくれたらしい。  望はさっき言っていた場所で右へとハンドルを切り、焼き肉屋を目指して車を走らせていく。

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