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ー希望ー39
「せやな、そういうことにしとくわぁ」
和也の優しくて温かい言葉に雄介は胸を撫で下ろすと、望に薬と水を渡す。
「念を押しておくけど、絶対に今日は安静やからなぁ」
「そうだな……。望! 医者の言うことは絶対だよな」
「そういうことやな」
「俺さぁ、とりあえず、望の親父さんとこに報告してくるな」
和也はそう言うと、部屋を出て行く。
雄介は望の頭を撫でながら笑顔を見せるのだ。
そんな雄介の手に望は手を添えると、
「何かお前の笑顔を見ると安心するし、この大きくて温かい手で頭を撫でられると何故か安心する……」
「そんなら、良かったわぁ」
望は安心したような表情を見せると瞼を閉じる。
薬のおかげなのか、それともいまさっき望が言っていたように雄介の大きな手に撫でられ安心したのかは分からないのだが……。
さっきまで浅く荒い息を繰り返していた望だが、今は普通の呼吸になってきていた。
雄介が次に気付いた時には、今まで雄介の手を握っていた手は体から力が抜けたからなのか、ベッドの上へと落ちるのだ。
望がゆっくりと眠りについたのに気付いた雄介は安堵のため息を漏らした直後、和也が戻って来たらしくドアを開ける音が聞こえて来る。
「雄介ー! とりあえずさぁ、望の親父さんに伝えて来たら、望の体調が良くなるまでお前達はゆっくりしとけだってさ。お前はとりあえず今日は望の看病でここに残るんだろ? まぁ、お前なら望のことを抱き上げて連れて帰ることは出来るだろうけど……。で、どうするんだ?」
「せやな?」
和也はソファの背もたれに両腕を乗せ、雄介がいる方へと視線だけ向けて話を始める。
「どっちがええねんやろ? 大したことが無いんやったら、やっぱ、ここに居るより家に帰った方がええやろうしなぁ?」
「何、迷ってんだよー。そこは雄介が決断するところだぞ」
「望といい、和也といい……あ、ああ! もう! ホンマ、ありがとうな! せやな! せや! 決断力や! よし! ほな、帰るわぁ」
「うん、分かった! とりあえず、明日の朝、また連絡してくれよ」
「おう!」
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