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ー希望ー44

「しかし、望んとこの病院は色んなことしてんねんな」  雄介は出来上がったうどんを望がいるテーブルへと運んで行く。 「まぁ、親父がな……色々とやってんだよ。他とは違う病院を目指しているのもあるんだけど、やっぱ、患者さんが来やすい病院を目指しているみたいだな。いわゆる地域密着型の病院ってやつだ」  望は雄介が作ってきたうどんを啜りながら言う。 「体調悪い時にはお粥かうどんの方がいいよな。お腹空いてなくてもお腹に入ってくるしさ」 「せやな……」 「な、雄介……どうしたら、ご飯がこんなに美味く出来るんだ?」 「慣れやろうなぁ」 「ホント、俺にはもったいないと思うよ……雄介みたいな奴がさ。頭は良くて、スポーツも万能そうだし、容姿は申し分ないし、家事はこなすし、イクメンにもなりそうだしな」 「そう言うねんけど。俺が好きなんは望だけやからなぁ。他の奴には興味ないっていうんか。もし、好きな相手やなかったら、ここまでせんと思うで」  雄介は望に向かい笑顔を見せる。  そんな雄介の笑顔を直視してしまい、望は食べていたうどんを吹きそうになってしまったようだ。 「ちょ、おい……大丈夫かぁ?」 「大丈夫だけど……」 「ん? 大丈夫だけど……?」 「あ、いや……何でもねぇよ……」  望はそう言うと、食べていたうどんを食べ終え、 「ごちそうさま」 「完食出来たんやったら良かったわぁ。これから、どないする? 寝るか?」 「んー、寝るのはもう夜でいいや……なんか昼間に寝れる気がしないしさ」 「ほなら、どないすんねん。望の体調が悪いんやったら、外には行けへんやろ?」 「家でのんびり過ごすしかねぇよなぁ?」  と言いながら望は何故か雄介の瞳に視線を合わせ、どうやら何かを訴えているようだ。 「……ん? 何?」 「気付かねぇのかよ……なら、いいんだけど」  望はテーブルから立ち上がると、ソファの方に行ってしまう。  雄介はそんな望に首を傾げながら、望が食べ終えた食器を流しへと持って行き、さっき雄介が食べ終えた食器を洗い始める。  部屋内は急に静まり返り、望が付けたであろうテレビの音量だけが部屋内に響き渡っていた。

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