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ー希望ー52
「せやねぇ、裕実の場合は髪も長いし、たまに仕草とかも女の子っぽいとこあるしな。 ま、望の場合は仕草までは女性ではないねん気がするわぁ」
「まぁ、そこは努力してるけどな……。 俺が一番嫌なのは女性と間違われることだしよ」
「まぁ、俺が望のことを抱いている時は女性っぽくてもええねんけどー」
「嫌だ! それは絶対にしない!」
「でも、可愛え声、出してくれるやん!」
「そ、それは……」
望は雄介から視線を外すと、
「それはだな……仕方ねぇじゃねぇか! 勝手に出ちまうんだからよ。 だけど、俺は裕実のように女性っぽくはしねぇからな」
「しなくてもええよ。 俺はどんな望でも好きなんやからな」
雄介は望の体を軽く抱き締める。
「俺はありのままの望が好きなんや、素直やなくてもええ、仕事の時、怖い望でもええ、本当に本当に俺はお前だけが好きなんやからな……どんなに喧嘩しようとも俺が好きやと思うた相手やから、別れたいとは思わへんし」
「あ、確かに……今まで、お前が俺に向かって本気で『別れよう』って言ったことはないしな」
「まぁ、確かに望には何度か別れようって言われたことはあったねんけどな。 あん時、ホンマはどうやったん?」
「あ、いや……俺だって……本気にお前と別れようって思ったことは一度もねぇよ。 だけど、あの時はお前に気持ちを切り替えて欲しくてさ。 だって、不純な動機で、お前は医者になろうとしてた訳だろ? だからっていったらいいか?」
「でも、今は不純な動機で医者になった訳やないで……。 望や和也のことを見習って、ちゃんと医者にはなろうとしてるし、確かに、今は医師免許取ったばっかりでしっかり出来る医者にはなっておらんけど、自分でこの道を選んだ訳やし、最後までやり遂げないとアカンやろ? それに、消防士の仕事は、体力的にいつかは追いつかなくなるやろうし、それやったら、長く続けられる医者の方がええと思った訳やし、消防士って仕事はいつ死んでもおかしくはない仕事やったしな。 望が俺にいいきっかけを与えてくれたって思ってる……望に出会わなかったら、今、もしかしたら、俺はこの世にいなかったかもしれへんしな。 人ってホンマに運命っていうのはあるような気がするわぁ」
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