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ー希望ー65

「まぁな」 「もし、望にも同じようなことが起きたらどうする? それで、自分の患者さんなら助けたいって思うやろ?」 「ああ、まぁ……そうか。どんなに悪い奴でも、患者さんは患者さんだもんな」 「そういうことや。優しさとかいう問題ではないんやと思うで……」  そんな会話をしているうちに、いつの間にか車は家の駐車場に到着していた。 「さて、家に着いたし、望はもう横になりぃ」 「ああ、分かってる。でも、その言い方だと雄介は一緒には寝ないのか?」 「ちょっとな、俺もやることがいっぱいあるんやから、それを済ませてから横になるし」  二人は車を降りると、玄関から部屋の中へと入る。 「やることって?」 「洗濯物を干して、畳まなあかんし、坂本の病気について色々調べたいしな」 「そっか……」  望はそれを聞いて、どこか安心したような笑みを浮かべると、 「とりあえず、雄介の言う通り俺は横になってるから、早く終わらせてお前も横になれよ」 「分かってるって……」  望はそのまま二階へと上がり、ベッドへと横になる。  雄介は洗濯物を取り込んで、それを畳み、パソコンを開いて坂本の病気に関する調査を始める。  部屋内には、望の寝息と雄介がキーボードを叩く音が響いている。  しばらくして、 「おっ! これか! 坂本の病気ってやつ……」  調べ物の結果に嬉しそうに声を上げてしまった雄介は、すぐに望が寝ていることを思い出し、慌てて口を押さえる。 「症状、見事にビンゴしてるな……後は明日、望に聞いてみたらいいってことか」  雄介はパソコンの電源を切ると、時計を見て驚いた。 「もう、こんな時間か……そりゃ、目も疲れてるわけやな」  そして、雄介は静かにベッドに横たわり、望の横に身を沈める。  今日は、望が先に眠ってしまっていた。いつもなら、寝る前に少し話したり、イチャイチャしたりする時間もあるが、今日はその隙間もなく、静かな眠りへと導かれていった。

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